ミュージカル映画の金字塔『レ・ミゼラブル』がスクリーンに蘇る!“リミックス”で進化した生歌・サウンドの魅力とは
当時のキャストはいま…?12年経ったいま、『レ・ミゼラブル』を観るということ
このように現在もトップスターとして活躍を続けるキャストは別にして、12年前の作品を再見すると「あの人はいま?」のような感慨にもふける。最も気になったのは、バリケードの闘いで衝撃的な運命をたどるガブローシュ少年役のダニエル・ハトルストーン。本作から2年後にも『イントゥ・ザ・ウッズ』(14)のジャック役(「ジャックと豆の木」の主人公)で、ミュージカル俳優としての若き才能を発揮したが、2016年のジェームズ・グレイ監督作のアドベンチャー映画『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』で小さな役を演じたあと、俳優のキャリアが途絶えてしまった。ハトルストーンは、ガブローシュ役の勇姿として永遠に人々の心に刻み込まれることになる。
もう1人、映画スターで占められたメインキャストのなかで異彩を放っていたのが、エポニーヌ役のバークス。舞台版「レミゼ」からの抜擢だった彼女は、この映画のあともブロードウェイやウエストエンドで活躍を続けており、映画でも2022年に日本で公開されたミュージカル『トゥモロー・モーニング』で主演を務めた。同作での相手役ラミン・カリムルーは、「レミゼ」のジャン・バルジャン役でブロードウェイデビューを飾った俳優というのも奇縁で、ミュージカル映画ファンは、バークスの躍進とエポニーヌのパフォーマンスを重ねながら観るのもいいかもしれない。同じくアンジョルラス役のアーロン・トヴェイトも、ミュージカルを中心に活躍し、2020年には「ムーラン・ルージュ」でトニー賞ミュージカル主演男優賞の栄誉に輝いた。
公開から12年も経てば、ミュージカル映画のトレンドはもちろん、世界の情勢も大きく変わっているので、この『レ・ミゼラブル』から受け取るインパクトも当時とは違ったものになるだろう。しかし、映画ならではのあの壮大で美しすぎるラストシーンを迎えた時の、信じがたい満足感は不変のような気もする。そこを再確認するためにも、今回のリマスター/リミックス版は、またとないチャンスなのではないか。
文/斉藤博昭