ミュージカル映画の金字塔『レ・ミゼラブル』がスクリーンに蘇る!“リミックス”で進化した生歌・サウンドの魅力とは
音質の向上により、キャストの生歌や劇中のサウンドがさらにエモーショナルに
耳に残る「音」の体験は劇中で何度も訪れる。ジャン・バルジャン役のジャックマンが山の上を彷徨う冒頭での、歌の合間の苦しそうな息遣い(「独白」)。ファンテーヌ役、ハサウェイの鼻をすすり上げる音(「夢やぶれて」)。これは直前の髪を削ぐ音と相まって哀切さを倍増する。そしてエポニーヌ役、サマンサ・バークスの歌に重なる雨音(「オン・マイ・オウン」)など。歌声以外のサウンドがここまで感情を揺さぶるのも、Dolby体験ならではだろう。
その「オン・マイ・オウン」から、メインの登場人物がそれぞれの想いを歌い上げる「ワン・デイ・モア」(舞台版1幕のラストの曲らしく異常なテンションで盛り上がる)、若き勇士たちの「共に飲もう」、さらにフランス軍との闘いまでの息もつかせぬ流れは、この映画でも最大の見せ場であるが、楽曲の怒涛の果てに、耳をつんざく銃声が鳴り響くことで、ここまでサウンドのパワーに圧倒されることになるとは…。
キャストでは、ジャックマンの高音が改めてエモーショナルに響くことを確認できるが、リミックスで最も感心したのは、マリウス役のエディ・レッドメイン。やわらかく甘く、その場の空気を包み込むような歌声は、音質がよくなったことでその真価を堪能できる。「レミゼ」から2年後、レッドメインは『博士と彼女のセオリー』(14)でオスカーを手にし、演技の実力が評価されるが、歌での才能をもっと開拓してもいいと、このリミックスで感じる人も多いのではないか。これはファンテーヌ役のハサウェイも同様だ。一方で、本作のあとにも『グレイテスト・ショーマン』(17)で主演を務め、これから待機する作品(ニール・ダイヤモンドのトリビュートバンドで歌う主人公を演じる『Song Sung Blue』)でも歌の才能を披露し続けるジャックマンと異なり、レッドメインやハサウェイの熱唱は「レミゼ」限定という貴重なモーメントとなっている。