現代社会にも通じる痛快世直しエンタメ!『室町無頼』を観た映画のプロたちの最速レビューをネタバレなしでお届け
国も時代もクロスオーヴァーして、ひたすらエンタテインメントにこだわっている
国も時代もクロスオーヴァーする、無国籍活劇映画。あの入江悠監督が、室町時代を舞台にどんな戦国アクションを見せてくれるのかと思ったら、まさか『荒野の七人』(60)や『ワイルドバンチ』(69)のようなウエスタン調で攻めてくるとは。コメディに定評がある大泉洋や堤真一といった役者を擁することで、全体をカラっとしたトーンで統一しつつ、“滅びの美学”もきっちりと刻み込む。おまけに初期ジャッキー・チェン映画を彷彿させるような特訓シーンもあるのだから、タマらない。これはもう、演舞のような剣技&大胆な知略によって繰り広げられる、無国籍活劇映画。国も時代もクロスオーヴァーして、ひたすらエンタテインメントにこだわっている。ただただ愉快痛快なり!
(ポップカルチャー系ライター・竹島ルイ)
アクチュアリティを纏い、様々なジャンルムービーを取り込む“大きな器”としての時代劇の強みも示す
まず、白土三平の傑作漫画「忍者武芸帳 影丸伝」のように無類におもしろい。原作小説の志を継ぎ、無策で格差が広げられた現代社会へのレスポンスになっており、大泉洋演ずる実在の侍・蓮田兵衛が、剣と知略に長けた首魁・影丸みたいにとても魅力的なのだ。時代劇とは「作り手たちの“時代相”自体を映しだす劇」でもある。で、この入江悠監督の新作はアクチュアリティを纏い、様々なジャンルムービーを取り込む“大きな器”としての時代劇の強みも示す。アウトサイダーを描いた原点の『SR サイタマノラッパー』(08)ファンは無論、入江組初参加の長尾謙杜ファン、そして熱烈な時代劇ファンも観終わって大きくThumbs upするはず。なかでも終盤の驚異的な長回し(と、直後の不意打ちショット!)が最高だった。
(映画評論家・轟夕起夫)
時代劇の枠に収まらない、エンタテインメントとしてのおもしろさが純粋に追求された『室町無頼』。そして、強い志を持って世のために尽くそうとする兵衛や才蔵をはじめ、アウトローたちの姿には胸を熱くするものがある。本作を称賛する映画のプロたちから届けられたコメントの数々も参考にしながら、劇場で繰り広げられる自由の民の咆哮を受け止めてほしい!
構成・文/平尾嘉浩