伝統の継承と革新を体現。50年の時を経て新たな輝きを放つ『ベルサイユのばら』吉村愛監督が語る、偉大すぎる作品に込めた”愛とこだわり”

伝統の継承と革新を体現。50年の時を経て新たな輝きを放つ『ベルサイユのばら』吉村愛監督が語る、偉大すぎる作品に込めた”愛とこだわり”

「オスカルのたった一度のドレスは、絶対に登場させたかった」

原作リスペクトを踏まえたうえで、吉村監督が新たに送り出す劇場アニメとして「欠かせない」とこだわったのが、徹底的な時代考証だ。リアリティあふれる18世紀後半のフランスを舞台に、少女漫画の登場人物が躍動する。

徹底的な歴史、時代考証を重ね、18世紀当時のフランスを甦らせた
徹底的な歴史、時代考証を重ね、18世紀当時のフランスを甦らせた[c]池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

吉村監督は「原作者の池田先生は、歴史としての事実のなかにオスカルやアンドレという架空の人物を登場させて、すばらしい物語を作り上げています。私たちも、歴史や時代考証は頑張らなければと思いました。18世紀当時のフランスの生活や、ベルサイユ宮殿の様子、ドレスの構造などいろいろな調査を進めました。実際はどうだったのかを知ったうえで演出的に変えるなら嘘がないけれど、知らないものを知らないまま描いてしまうと、それは嘘になってしまう」と持論を述べ、「ベルサイユ宮殿に行ったことがある方ならば『あそこだ!』と思えるような表現をしたいと思っていましたし、ドレスは衣装考証の先生に入っていただいています。当時のフランスで着られていた衣装を再現しているので、原作や宝塚、テレビアニメとは違うドレスも登場します。ドレスがお好きな方が見たら『ローブ・ア・ラ・フランセーズ(18世紀のロココ様式の贅沢な装飾が施された女性服)を着ている!』など、盛り上がるポイントもあるはず。アントワネットは朝、昼、晩にお着替えをして、訪れる場所によってもドレスをすべて着替えているという記述もあるくらいなので、ドレスはかなりこだわっています」と強調する。

白目や瞳のなかで光る星といった少女漫画らしさも込められている
白目や瞳のなかで光る星といった少女漫画らしさも込められている[c]池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

さらに欠かせなかったのが“ベルばら”らしさだ。「50年以上前の少女漫画である絵のタッチを大切に、驚いた時の白目や瞳のなかで光る星など、これぞ『ベルサイユのばら』と思うようなものをしっかりと表現したいなと思っていました」と吉村監督が語るように、自分の人生を貫く意志の見える、目の輝きも“ベルばら”のポイント。「バスティーユ襲撃で、オスカルが相手をにらみつけるシーンがあります。原作を読んでいても、あの目のキラつき方はすごいなと驚きました。本作でも、目の表情は大切なものとして描いています」。

オスカルがフェルゼンに寄せる想いが切ない!
オスカルがフェルゼンに寄せる想いが切ない![c]池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

“ベルばら”らしさという意味では、ファンならば必ず見たい数々の名シーンも気になるところ。オスカルが密かに恋心を寄せるフェルゼンと踊るために身にまとった、オスカルにとって“たった一度のドレス”もしっかりと登場する。「原作ファンが大好きなシーン。私と金春さんも絶対に描きたいと思った」と笑顔を見せた吉村監督は「原作と同じく、オスカルは白いオダリスク風のドレス(首から胸元までしっかり覆われた、当時流行していたロココスタイルとは趣が異なるもの)を着ています。オダリスクは、実はあの時代にはないドレスなんです。ほかのシーンでは、時代考証を重ねて当時に合ったドレスを登場させていますが、ここだけは時代に合わずとも、原作と同じドレスが必要だとこだわったシーンです」と吐露。オスカルとアンドレが結ばれるシーンは「岡さんのこだわりによって、オスカルとアンドレのすばらしい表情が見られます。ここでも夢を感じられるような少女漫画らしさ、美しさを大切にしました」とロマンチックな場面として完成している。


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