「シュレック」シリーズなど、たくさんの名作を送り続けてきたアニメーション・スタジオのドリームワークス。30周年を迎えた同スタジオが満を持して製作したのが『野生の島のロズ』(2月7日公開)だ。物語は事故で野生動物しかいない島に漂着した都会用のアシスト・ロボットのロズが、大自然に触れ、動物たちと交流し、感情が芽生え変化していく様子を描いたもの。シンプルなストーリー展開ながら、圧倒的な語り口で観る者を虜にし、先日発表された今年度アカデミー賞で、長編アニメーション映画賞、作曲賞、音響賞の3部門でノミネートされている。
本作の監督・脚本を務めたのはクリス・サンダースだ。ディズニー・アニメーション『美女と野獣』(91)や『アラジン』(92)の原案に携わり、2002年に『リロ&スティッチ』で監督デビュー。その後、ドリームワークスに移籍し、2010年に『ヒックとドラゴン』をヒットに導いた。そんなサンダース監督が1月中旬に来日。
『映画けいおん!』(11)、『映画 聲の形』(16)などヒット作で知られ、2024年に初のオリジナル劇場長編作『きみの色』で第26回上海国際映画祭金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞するなど、世界から脚光を浴びる山田尚子監督とサンダース監督の対談企画が実現した。互いの作品を観て虜になった2人がアニメーションの魅力について語り尽くす。
「スクリーンからすごい生命力を感じました」(山田)
山田尚子監督(以下、山田)「まずは映画の完成と日本での上映、おめでとうございます」
クリス・サンダース監督(以下、サンダース)「ありがとうございます」
山田「『野生の島のロズ』は、観ている間ずっと楽しかったです。3Dアニメーションではあるのですが、手で作っていること、その手触りを大事に残されたアートスタイルが大好きです。スクリーンからすごい生命力を感じました」
サンダース「僕も山田監督の『きみの色』を拝見して、キャラクターがとても美しく描かれていて、すごく立体的な深みがあってすばらしいと感動しました。キャラクターを魅力的に見せるって、実はとても難しいことじゃないですか。“魅力”というのは作られるものではなく、兼ね備えているものだと思うんです。でも『きみの色』の人物はみんな見事にその魅力を持っていて、とてもフレッシュで神々しい印象で。山田監督に聞きたいことがたくさんあるんですが、質問してもいいですか?」
山田「え!いきなりサンダース監督からの質問ですか!?」
サンダース「そもそもいつから『きみの色』を作り始めたんですか?」
山田「いつから入ったのか…。記憶がだんだん薄れていますが、この作品は2021年の7月から脚本をスタートさせました。私は脚本の制作にはそんなに時間がかからないんですが、絵コンテを描くのにすごく時間がかかるんです。だから実際のアニメ製作に着手できたのはその年の冬でした。そんな私の絵コンテを気長に待ってくださったスタッフの皆さまには感謝しかありません。『野生の島のロズ』はいつから製作をスタートさせたんですか?」
サンダース「ピーター・ブラウンの原作の権利を取得したのが2017年。実際にスタートしたのは2019年です」
山田「脚本にはどのくらいかかりましたか?」
サンダース「どのくらいでしょう…。山田監督もご存知かと思いますが、そう簡単には脚本ってできないものですよね。自分のねらいがちゃんとロックされるまでが難しいというか。ちなみにテスト試写をした時に、アメリカだとやり直しができるのですが、山田監督はいかがでしょうか?」
山田「(言いにくそうに)なかなかそれは…許されにくいかなと。なので、絵コンテ段階で決めたことをなるべくやり直さないようにします。作画に入ってからは、本当にミス探しくらいしかしないです」
■『きみの色』Blu-ray&DVD
発売日:2月26日(金)
価格:Blu-ray豪華版 8,800円(税込)/Blu-ray通常版 5,500円(税込)/DVD通常版 4,400円(税込)
発売元:STORY inc.、サイエンス SARU
販売元:東宝