2~3割のミニシアターが閉館を検討…映画ファンの想いを届けるプロジェクト「#ミニシアターへ行こう」とは?

コラム

2~3割のミニシアターが閉館を検討…映画ファンの想いを届けるプロジェクト「#ミニシアターへ行こう」とは?

池袋のシネマ・ロサ1館で公開されるや、口コミで評判が広がり全国300館以上に拡大公開、第67回ブルーリボン賞では作品賞と主演男優賞の2冠に輝き、第48回日本アカデミー賞では優秀作品賞をはじめ7部門で優秀賞を獲得した『侍タイムスリッパー』(公開中)。ポレポレ東中野など4館で公開され、ドキュメンタリー映画としては異例の100館規模へ上映館が拡大している『どうすればよかったか?』(公開中)など、2024年も映画界を盛り上げる作品を次々と世に送りだしたミニシアター。

興行収入が8億円を超える大ヒットとなった『侍タイムスリッパー』
興行収入が8億円を超える大ヒットとなった『侍タイムスリッパー』[c]2024未来映画社

こうした明るい話題の一方で、近年様々な事情から幾度となく存続の危機に立たされている全国各地のミニシアターの現状は、引き続き厳しいままとなっている。本稿では、そんなミニシアターを支援すべく、全国の映画館や興行場を束ねる「全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)」が昨年夏よりスタートさせたミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」の取り組みについて紹介していこう。

「#ミニシアターへ行こう」プロジェクトとは?

1980年代から90年代にかけて巻き起こった“ミニシアターブーム”から現在に至るまで、日本やアメリカはもちろんのこと、ヨーロッパやアジア、なかなか触れる機会のない珍しい国や地域で製作されたインディーズ映画やドキュメンタリー、アートフィルムなどを上映し、日本国内の映画ファンから愛され、そして映画文化をより豊かなものにしてきたミニシアター。

地域に根差し、映画文化の発展に貢献してきたミニシアター
地域に根差し、映画文化の発展に貢献してきたミニシアター写真は塚口サンサン劇場公式ホームページより

もともと経済性が難しい業態ということもあって、2020年に発生した新型コロナウイルスに伴う自粛要請等によって全国のミニシアターでは閉館の連鎖が起きる危機に直面。その際には濱口竜介監督と深田晃司監督が発起人となって発足した「ミニシアター・エイド基金」などを通じ、全国の映画ファンから支援が集まり、なんとか急場を凌ぐことができた。

昨年夏からスタートした「#ミニシアターへ行こう」で、ミニシアター文化を救おう!
昨年夏からスタートした「#ミニシアターへ行こう」で、ミニシアター文化を救おう!

しかしミニシアターが直面している課題はそれだけではない。2010年ごろから導入が進められてきた、映画館の心臓部ともいえるDCPプロジェクターをはじめとした設備の老朽化や、事業継承の問題など、今後も経営を継続させていくうえで欠かせない大きな設備投資の必要性が、全国のミニシアターに迫っている。こうした状況を打破すべく立ち上げられたのが、「#ミニシアターへ行こう」だ。

プロジェクトが始動した昨年7月には、映像作家の柿沼キヨシによる人気YouTubeチャンネル「おまけの夜」に全興連の佐々木伸一会長が自ら出演。多くの人気監督を世に送りだしたミニシアターの功績や、設備投資のためにどのくらいの金額が必要とされているのか、そしてそれを工面する難しさに直面し、2割から3割のミニシアターが現在も閉館を検討している状態にあることなどを解説してくれているので、この取り組みの重要性についてより詳しく知ることができるだろう。


各々のミニシアターが置かれている現状は、劇場によって異なっている。そのため「#ミニシアターへ行こう」では、クラウドファンディング・プラットフォーム「MOTION GALLERY」を活用し、劇場ごとに支援を呼びかける取り組みを主に行なっている。「自分の街や故郷にある、また遠方にあるけれど大切にしている映画館を守りたい」という映画ファンの思いがダイレクトに反映されるものとなっており、これらの積み重ねによってミニシアター文化全体が守られていくことになるはずだ。


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