2~3割のミニシアターが閉館を検討…映画ファンの想いを届けるプロジェクト「#ミニシアターへ行こう」とは?
日本最古級の映画館のレトロな雰囲気や、懐かしい“町の映画館”の魅力に触れる!
「#ミニシアターへ行こう」では、クラウドファンディングを活用した具体的な支援に加え、公式アンバサダーによるミニシアター応援企画も実施されている。各ミニシアターの公式アンバサダーとして、応援したい映画館の魅力をYouTube動画などのSNSで発信していくというもので、すでに3つのミニシアターが参加。ここからは、公式アンバサダーによって制作された動画と共に、それぞれの映画館について紹介していこう。
●高田世界館(新潟県)
クラウドファンディングに加えて、アンバサダー企画も実施した新潟県上越市にある「高田世界館」は、1911年に芝居小屋として開業し1916年に常設映画館となった、現存する日本最古級の映画館。開業時から変わらない建物は現在も現役で、過去には老朽化から取り壊しの危機に直面したことも。その際に市民が主体となって保存運動が発足し、NPO法人が建物を継承。修繕ボランティアの呼びかけや文化財としての申請なども行われ、2014年に定期上映が再開。現在では国の登録有形文化財や近代化産業遺産にも指定されている、レトロで趣のあるミニシアターだ。
同劇場のアンバサダーを務めたのは、先述のYouTubeチャンネル「おまけの夜」と、お笑い芸人でYouTuberの大島育宙。「おまけの夜」の応援動画では、魅力あふれる映画館の内部の様子が確認でき、大島の動画では上野迪音支配人から劇場の100年以上にわたる歴史が語られる、どちらも映画ファン必見の内容となっている。
●塚口サンサン劇場(兵庫県)
兵庫県尼崎市にある「塚口サンサン劇場」は、1953年に阪急塚口駅前に「塚口劇場」として開館。その後1978年に現在の建物のオープンにあわせて再スタートを切った、昔懐かしい“町の映画館”。4つあるスクリーンでは、シネコンでも上映されるファミリー向けの大作映画もかけながら、シネコンで上映が終了した作品やミニシアター系の作品を上映するなど、常にバラエティに富んだラインナップが用意されている。
公式アンバサダーを務めるのは、アメコミ侍の柳生玄十郎のYouTubeチャンネル「しゃべんじゃーず」。応援動画では劇場に直撃取材を行い、スタッフの案内のもとで魅力を深掘り。“塚口音響”と呼ばれるこだわりの音響設備から、マサラ上映(※主にインド映画の上映で、映画に合わせクラッカーを鳴らしたり踊ったりする体感型イベント)を機に劇場の特徴のひとつとなったイベント上映、さらには快適な環境で映画を観てもらいたいというスタッフの想いが結実した“日本一綺麗なトイレ”まで。これを観たら、遠方からでも一度足を運びたくなること間違いなしだ。
●サツゲキ(北海道)
1968年に札幌市の中心部に開業した大劇場の「札幌劇場」は、1970年代以降に同じ建物内にあった娯楽施設を次々と改装し、大作映画から単館映画まで幅広い作品を上映する複合映画館施設として、一時は最大で11劇場を擁する札幌市民にとっての映画の聖地だった。その後、リニューアルや名称変更などを経て「ディノスシネマズ札幌劇場」となり、2019年に建物の老朽化を理由に閉館した。
そして、復活を望む市民の声に後押しされ、翌2020年に場所を移してミニシアターとして再スタートを切ったのが「サツゲキ」。サツゲキがあるのは札幌を代表する繁華街・狸小路のほぼ中間に位置する場所。ここもまた、1925年に開業した三友館を皮切りに、日活館、東宝プラザと改称や建物の建て替えを重ねながら、2011年の閉館まで100年近くも映画館として営業してきた場所。まさに、札幌市民の映画の思い出が詰まったふたつの劇場の歴史を背負った、唯一無二のミニシアターといえるだろう。
公式アンバサダーを務めるのはお笑い芸人で映画紹介人のジャガモンド斉藤。応援動画では関根ささらをゲストに迎え、横澤康彦支配人に話を聞きながら、こだわりのカフェスペースなど劇場の魅力が紹介されていく。壁一面に書かれた著名人のサインや劇場の歴史、さらにはなかなか見ることのできないスクリーンの裏側まで、貴重なものがたっぷり詰まった動画となっている。
この3館のほかにも、前身の映画館から数えると100年以上の歴史がある、八丁座(広島県)でのアンバサダー企画が進行中。「#ミニシアターへ行こう」特設サイトでは、アンバサダーによるミニシアター応援動画がまとめられているので、あわせてチェックしてみてはいかがだろうか。
これからもミニシアターを盛り上げていくためにできること
冒頭で紹介した『侍タイムスリッパー』ような日本のインディーズ映画から、話題沸騰中のJホラー『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)といった今後さらに注目を浴びそうな気鋭監督たちの作品、さらには往年の名作映画の再上映など、シネコンだけでは味わいきれない映画の奥深さをとことん楽しめるミニシアター。
クラウドファンディングに参加するのはもちろんのこと、やはり実際に足を運んで、そのミニシアターにしかない空気を肌で直接感じながら映画を観ることがなによりの応援となることだろう。たくさんの映画や人と出会えるミニシアターにお出掛けして、“ミニシアター文化”を応援しよう!
文/久保田 和馬