堀未央奈とゆりやんレトリィバァが語り合う、ホラーへの深い“愛”。イチオシの1本はコレだ!
「『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は、なにかが起こるんじゃないかという怖さや不気味さを全編に感じました」(ゆりやん)
――お2人とも日頃からたくさんのホラーを観てらっしゃると思いますが、2024年にご覧になったなかで、特に印象に残ったホラー作品を教えてください。
ゆりやん「清水崇監督の『あのコはだぁれ?』は『絶対観に行きたい!』って思っていたんですが、実際に観たらもう怖くて…。子どもの頃に怖がっていた感覚をまた感じさせていただいたように思って、ホラーってやっぱりコレだよねと。すっごくおもしろかったです!」
――堀さんはいかがですか?
堀「すごく悩むんですけど、『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』ですね。『悪魔のいけにえ』シリーズがずっと好きなんですが 、本作は特に好きな1本で、4回観直しています。世間ではレザーフェイスのことを『殺人鬼なんだから、もともと悪いやつだったんだろう』というイメージを持っていると思うんですけど、本作では前日譚として、彼がこうなってしまったことには自分ではどうしようもできなかった幼少期の環境が関係していたり…という背景が描かれています。周りが決めつけてしまったことによって起きた悲劇といいますか、いろいろな感情が描かれている、とてもすばらしい作品でした。映画としてもスピード感があって、ぜひ観てほしい1本です」
――堀さんはホラー好きの友人たちと鑑賞会を開かれているそうですね。どんな作品をご覧になるんですか?
堀「最近だと、友達8人くらいで『ソウ2』を観ました。なかには1作目を観たことがない子もいたので、結局『ソウ』までぶっ通しで観ちゃって(笑)。やっぱり1作目のあのどんでん返しにはしびれますね。グロテスクではあるんですが、そこには物語があって、ちゃんと理由もある。『ソウ』のような、本当におもしろい作品が増えてくれるといいなと思います」
――1作目は本当に名作ですね。堀さんの好みがわかった気がします!
ゆりやん「誰かと一緒に観たということだと私も、実は近藤監督と…」
堀「え?一緒にホラーを観たんですか?」
ゆりやん「はい、並んで観ました…。『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』を」
――第37回東京国際映画祭での上映です(笑)。お越しいただけて光栄でした!
ゆりやん「『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』はJホラーらしさといいますか、なにかが出てくる、出てこない以前に、ずっと不穏な、なにかが起こるんじゃないかという怖さや不気味さが全編にあって、まずはとても怖かったです。ビデオの画質ってめっちゃ怖いなと思い知らされました」
――ありがとうございます。具体的にはどんなポイントで怖いと感じましたか?
ゆりやん「ロケ地が全部怖い場所ばっかりでしたね。主人公たちが住んでるアパートの一室もよかったです。こういう生活感のある場所って、リアリティがないと怖くなくなると思うんですけど、リアルな部屋として作品に溶け込んでいて、没入できました」
――色々と限られた条件のなかで作り込んでいったので、そこを指摘いただけるととてもうれしいです。
ゆりやん「美術や小道具も印象的で、特に骨壷が映った時にはゾッとしました。全体的に、怖いところをここです!って強調するような描き方ではないですよね。自分で『いま、なにか写ってたんじゃないか…?』って“なにか”を見つける、というアトラクション感覚みたいなところがあって感動しました。なにより、監督の隣で観させていただけてうれしかったです!」
――ありがとうございます。次回作も頑張ります!
「選考を通して自分も大事にしていきたいと感じるのは、アイディアを信じて作り上げること」(堀)
――ものづくりに携わっているなかで、選考委員としての経験は普段の活動にどんな影響を与えていますか?
ゆりやん「いままでは10年くらいピン芸人として活動してきて、ネタを作って1人でやって…ということが多かったんですが、最近はチームとして自分の意見だけではなく、いろんな方の意見を取り入れるというものづくりの経験をすることが多くて。『日本ホラー映画大賞』に応募される監督たちには、自分の経験を通してとても尊敬の念を感じています」
――作品の選考とご自身の創作活動と、別の視点から見ることで気づきがあったんですね。
ゆりやん「そうなんです。お笑いの賞レースもそうですが、本番に向けて仕上げていくなかで考えすぎて、だんだんと本来自分がやりたかったことからずれていくことがあって、すごく難しいなと思います。『日本ホラー映画大賞』の応募されている監督たちも、たくさん悩んで、魂を震わせるような作品を作っているんだなと感じます」
堀「選考を通して、自分もものづくりのうえで大事にしていきたいと感じるのは、自分がいま一番やりたいこと、興味があることを信じて作り上げること。例えば『悪魔のいけにえ』でトビー・フーパー監督がチェーンソーを使ったことで、その後ホラー映画ではチェーンソーが定番アイテムになりましたよね。アイディアを信じて切り拓いてきた方々がいるから、ホラージャンルはここまで発展してきたのだと思います」
ゆりやん「本当にそうだと思います。もちろん、大賞を獲るためにはこうなんじゃないか、って考えたりもするとは思うんですが、選考のうえで『こういう条件を満たしていれば大賞だね』、なんて話したことは一度もないですね。純粋に、選考委員それぞれにとってなにが怖かったか、なにがおもしろかったかを話しています。だから、あまり寄せすぎず、ご自身の感覚を信じて作った作品が観られるのを、私も楽しみにしています!」
取材・文/近藤亮太