『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太監督と「或るバイトを募集しています」くるむあくむが語り合う、次世代の“恐怖”のつくりかた

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太監督と「或るバイトを募集しています」くるむあくむが語り合う、次世代の“恐怖”のつくりかた

「第2回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞した同名短編を近藤亮太監督自ら長編化し、商業監督デビューを飾った『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)。1月24日に公開を迎えるや、近年稀に見る“正統派Jホラー”として話題となり、各地の劇場で満席回が続出し、“角川ホラー文庫”風のパンフレットも完売が相次いだため急遽増刷されることとなった。上映館数も初週から倍増し、2月14日(金)以降もさらなる拡大公開が予定されているなど旋風を巻き起こしている。

そんな本作の反響を受け、1月31日から週末金土の4日間、計6回にわたって行われたのが、近藤監督をホストに、ホラーを愛するクリエイターたちをゲストに迎えてJホラーの魅力を対談形式で語り尽くすというトークイベント「もっとJホラーを楽しもう!トークセッション」。

近藤監督が演出として参加した「TXQ FICTION」の「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」を手掛けたテレビ東京プロデューサーの大森時生や、「ここにひとつの□がある」が発売中の人気ホラー作家の梨、近藤監督の師である脚本家・映画監督の高橋洋、アナクロ系YouTubeチャンネル「フィルムエストTV」のにしい監督こと映像作家の西井紘輝、本作の脚本を担当した金子鈴幸らが登壇し、連日劇場はホラーファンでにぎわいを見せた。

【写真を見る】紙袋姿で登壇のくるむあくむの恐怖の原点、近藤亮太作品の“VHS映像”の秘密が明らかに!
【写真を見る】紙袋姿で登壇のくるむあくむの恐怖の原点、近藤亮太作品の“VHS映像”の秘密が明らかに!

2月8日にヒューマントラストシネマ渋谷で行われた「もっとJホラーを楽しもう!トークセッション」最終回に登壇したのは、作家のくるむあくむ。不気味なアルバイト募集の告知をX(旧Twitter)に投稿しホラー界で頭角をあらわし、自身のYouTubeチャンネルではホラーショート動画を次々と投稿。漫画「N」で原作を務め、昨年秋には著書「或るバイトを募集しています」を発表するなど、いま注目の次世代クリエイターだ。くるむあくむは、なんと今回のイベントで初めて公の場に姿を現すことになったのだという。そこで本稿では、複数のメディアを跨いでホラーを伝道する近藤監督とくるむあくむの貴重な対談の模様をたっぷりとお届けしていこう。

「潜在的に思っていた違和感が反映されている」(くるむあくむ)

幼いころに弟が山で失踪するという過去を持つ兒玉敬太(杉田雷麟)のもとに、母親から一本の古いビデオテープが届くところから始まる。そこには敬太が撮影した、弟が失踪する瞬間が収められていた。霊感を持つ同居人の司(平井亜門)から深入りしないよう助言される敬太だったが、自分についてまわる忌まわしい過去を辿るべく動きだすことに。そして、そんな敬太を取材対象として追いかけていた新聞記者の美琴(森田想)も帯同し、3人は“山”へと誘われていく。

ーーまずはクリエイター同士、お互いの作品についてどのようにご覧になっているのでしょうか?

くるむあくむ「近藤監督から直々に『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の東京国際映画祭での上映にご招待いただいて、作品を拝見しました。本当に一つ一つの静寂が脳に残り続けると言いますか、謳い文句となっている“ノーCG、ノー特殊メイク、ノージャンプスケア”が安心材料になると思いきや、しっかりと警戒し続けたくなる104分だったと感じました」

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は大反響を受け、上映劇場がさらに拡大中!
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は大反響を受け、上映劇場がさらに拡大中![c]2024「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

近藤「とてもうれしいです。くるむあくむさんはX上で、“ぬいぐるみと留守番する”とか、さまざまな想像が膨らむような不気味なバイトの募集要項を投稿されてバズっている。初めて見つけた時に、考えたことがない切り口だととても感嘆しました」

くるむあくむ「ありがとうございます」

近藤「この映画でもそうだったのですが、怪異とか、怖いものを描こうとした時には、まず間接表現を考えるものです。音が聞こえるとか、すりガラス越しに見えるとか。ですがバイト募集の告知で『なんでこんな募集をしているんだろう?』『どういう意味なんだろう?』と受け手に考えさせる方向で怖いというのは考えたことがない方法。よくよく考えてみればアルバイト募集って、まったく知らない人のテリトリーに自分から応募するということなんだなと気付き、なるほどな、すごいなと思いましたね」

くるむあくむ「そう言っていただいてとても光栄ではあるのですが、自分からすると逆に恐怖や違和感というものは、まず日常のなかにあるものだと感じています。これまで自分が作ってきた作品は、幼いころから潜在的に思っていた違和感や気持ちが反映されているものなんです」

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