批評家が選ぶ、2020年以降のA24作品ランキング!オスカー作品からホラーまで揃った超ハイレベルな“フレッシュ”10選

批評家が選ぶ、2020年以降のA24作品ランキング!オスカー作品からホラーまで揃った超ハイレベルな“フレッシュ”10選

新たな才能を発掘する宝庫!若手監督たちが続々A24から飛躍

最も高い評価となる98%フレッシュで肩を並べたのは2作品。リー・アイザック・チョン監督の『ミナリ』と、ディーン・フライシャー・キャンプ監督が実写とストップモーションアニメを融合させ、モキュメンタリータッチで仕上げたジャンルレスな傑作『マルセル 靴をはいた小さな貝』だ。

韓国系移民の家族を描き、アカデミー賞を沸かせた『ミナリ』
韓国系移民の家族を描き、アカデミー賞を沸かせた『ミナリ』[c]Everett Collection/AFLO

監督自身の原体験をもとに、アメリカの田舎町で暮らし始めた韓国系移民の物語を描いた『ミナリ』は、第93回アカデミー賞で作品賞など6部門にノミネートされ、祖母のスンジャ役を演じたユン・ヨジョンが韓国人俳優として初めて助演女優賞を受賞。同作のあと、アイザック・チョン監督は、『ツイスターズ』(24)や「スター・ウォーズ」のドラマシリーズ「マンダロリアン」や「スター・ウォーズ/スケルトン・クルー」などハリウッド大作を手掛ける監督に成長。まさにA24が若手監督の発掘に長けたスタジオであると証明する1本といえよう。

それは『マルセル〜』を手掛けたキャンプ監督も同様だ。同作は元々YouTubeに投稿された短いストップモーションアニメを長編映画化した作品で、キャンプ監督は自ら体長2.5センチの小さな貝“マルセル”と共演。実写映像が大部分を占める作品でありながら、第95回アカデミー賞では長編アニメーション賞にノミネートされるなど世界中の映画祭を席巻。一躍脚光を浴びる存在となり、ディズニーの実写版『リロ&スティッチ』(初夏公開)の監督にも大抜擢されたほど。

『マルセル 靴をはいた小さな貝』は実写&ストップモーションアニメのハイブリッド!
『マルセル 靴をはいた小さな貝』は実写&ストップモーションアニメのハイブリッド![c]Everett Collection/AFLO

ちなみに一口に「A24作品」と言っても、『ミナリ』や『フェアウェル』などのようにA24が直接製作に携わっている作品もあれば、『マルセル〜』や『ファースト・カウ』などのように映画祭などで大絶賛を集めた作品をA24が買い付け北米公開された作品もある。いずれにしても、これから伸びる監督を見抜く相馬眼が冴え渡っていることは一目瞭然。今後A24作品を観る際には、監督の名前も欠かさずにチェックしておくのがいいだろう。

それにしても、13本並べても最も低いスコアが94%というのは驚異的。2020年以前の作品を含めても、これまでA24が手掛けた170本ほどの作品のうち58作品が90%超え、実に半数近くの作品が80%超えのスコアを叩きだしている。先述したようにアカデミー賞を席巻し、近年のA24の看板タイトルともいえる『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がギリギリで滑り込むほどの、かなりハイレベルなリストとなっている。

オーストラリアの双子YouTuberの長編デビュー作として話題を集めた『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』
オーストラリアの双子YouTuberの長編デビュー作として話題を集めた『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』[c]Everett Collection/AFLO

特徴的な点は、アカデミー賞で候補入りを果たしたり映画祭で絶賛されたりするなど、いわゆる“批評家受け”するタイプの作品に限らず(もっとも『エブエブ』に関してもジャンル的には決して批評家やオスカー受けするタイプの作品ではなかったのだが)、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』や『X エックス』のような典型的ジャンル映画も高評価を獲得していることだろう。とりわけホラー作品はコアなファンが付きやすいジャンル。リストには入らなかったアリ・アスター監督作品をはじめ、“A24ホラー”というジャンルが確立し、熱狂的な支持を集めていることは見逃せない。

『X エックス』を手掛けたタイ・ウエスト監督は同作の続編シリーズをA24のもとで展開し、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』のダニー&マイケル・フィリッポウ監督も次回作『Bring Her Back』でA24と再タッグ。ホラー以外にも『パスト ライブス/再会』のセリーヌ・ソン監督の次作も北米ではA24配給となったり、『地球はウソでまわってる』で製作と主演を務めたジュリア・ルイス=ドレイファスは『終わりの鳥』(4月4日公開)でふたたびA24作品の主演を張る。彼らのような常連監督&俳優の存在も、スタジオの強化には必要不可欠だ。

アカデミー賞作品賞にもノミネートされた『パスト ライブス/再会』
アカデミー賞作品賞にもノミネートされた『パスト ライブス/再会』[c]Everett Collection/AFLO

2023年にA24は、日本のハピネットファントム・スタジオと独占パートナーシップ契約を締結。A24が世界配給権を所有する作品を、ハピネットファントム・スタジオが独占的に国内配給を手掛ける仕組みが確立したこともあり、いままで以上に多くの良質なタイトルが日本の映画館で観られる機会は増えていくことだろう。急成長を続けるA24の動向に、今後も注目していきたい!


文/久保田 和馬

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