『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』から『カツベン!』まで、周防正行監督が描く“あまり知らない世界”4選!
12月13日(金)に周防正行監督作品『カツベン!』が公開される。周防監督5年ぶりの新作として注目されている本作、テーマは映画に音がなかった時代に活躍した「活動弁士」だ。活動弁士という職業を、本作で初めて知るという人も多いだろう。これまでにも、世間的にあまり知られていない、知っていても触れる機会が少ない仕事や世界を題材にしてきた周防監督。今回はそんな周防作品の魅力がつまった「知らない世界」の内情を描いた4つの作品について紹介したいと思う。
廃部寸前の大学相撲部が舞台のコメディ『シコふんじゃった。』(91)
卒業単位と引き換えに廃部寸前の相撲部の助っ人として入部することになった大学生の奮闘を描いた作品で、主演の本木雅弘がまわし姿を披露したことも大きな話題となった。弱小相撲部が大会の決勝戦に進むまでの物語が淡々と描かれているのだが、そんななかでも本木をはじめとした出演者のコメディセンスが光っている。特に相撲の知識は豊富だが、試合に一度も勝ったことがない大学8年生を演じる竹中直人のキャラが抜群におもしろい。試合になると緊張して下痢になってしまう様子をリアリティあふれる演技で見せる場面は爆笑ものだ。大学相撲部というあまりメジャーではない世界を世に知らしめた作品となった。
中年男が社交ダンスの魅力に目覚める『Shall we ダンス?』(96)
平凡な毎日を送る中年サラリーマンが社交ダンスの世界に足を踏み入れ、奮闘する姿を描くハートフルコメディ。役所広司が演じる冴えない中年男の正平が、通勤電車の中から見かけた草刈民代演じる美女の舞を目当てに社交ダンス教室に通うようになり、同じ教室に通う個性豊かな生徒たちとの出会いによって、次第に社交ダンスにのめり込んでいく。社交ダンスの世界だけでなく、家族に内緒で社交ダンスを習っていた正平の妻が浮気を疑ってひと悶着あるなど、楽しい人間模様も盛り込まれた、“社交ダンスブーム”も巻き起こした作品だ。前述の『シコふんじゃった。』と共に、明日11月24日(日)をはじめとして複数回、4K修復版がシネフィルWOWOWで放送される予定となっているので、両作あわせてぜひチェックしてほしい。
ミュージカル映画として舞妓の世界を描いた『舞妓はレディ』(14)
地方から京都にやってきた少女の春子が、舞妓を目指して成長していく姿を描いた作品。架空の花街にある老舗のお茶屋を舞台に、ところどころ歌とダンスを交えながらミュージカル仕立てで物語が進んでいく。春子を演じたのは、オーディションで抜擢された上白石萌音だ。舞妓見習いとして花街のしきたりや稽古、なまりが抜けず言葉づかいに奮闘する姿を生き生きと演じた。映画を通じて、私たちが普段知ることができない舞妓の世界を垣間見ることができる。
『カツベン!』で描くのは、映画に音がなかった時代のスーパースターたち
日本の映画に音が無かったころ、映像に合わせて作品の説明をする活動弁士が人気を博していた。『カツベン!』では、100年ほど前の日本を舞台に、活動弁士に憧れた俊太郎が紆余曲折を経てホンモノの活動弁士となっていく姿を描いている。成長した俊太郎を演じるのは成田凌、俊太郎の幼なじみで初恋の相手でもある梅子を黒島結菜が瑞々しく演じている。遠い昔の日本で、映画に夢中だった人の多くが銀幕の俳優ではなく活動弁士を目当てに小屋に来ていたという事実を丁寧に映しだす。周防監督らしいクスッと笑え、時には爆笑するシーンが随所に盛り込まれているのも見どころで、まさに集大成といえる仕上がり。
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なじみのない世界を親しみやすく描き、新しい発見に出会うことができる周防監督の作品。いつの時代も変わらない、人間たちの悲喜こもごもを楽しんでほしい。
文/咲田真菜
■『シコふんじゃった。[4K修復版]』
下記日程にてシネフィルWOWOWで放送
11月24日(日)17:00~、12月4日(水)14:00~、12月20日(金)19:00~
※放送は2Kダウンコンバート
■『Shall we ダンス? [4K修復版]』
下記日程にてシネフィルWOWOWで放送
11月24日(日)14:30~、12月5日(木)14:00~、12月20日(金)21:00~
※放送は2Kダウンコンバート
シネフィルWOWOW
https://www.cinefilwowow.com/#index
■『舞妓はレディ スタンダート・エディション』
DVD 発売中
発売元:フジテレビジョン
販売元:東宝