政権交代するまで公開されなかった問題の“脱北者”映画とは
2002年に脱北者25人がスペイン大使館に駆け込んで韓国に亡命した「北京駐在スペイン大使館進入事件」をモチーフに、北朝鮮から中国へ脱北した、ある父子の運命を描くヒューマン映画『クロッシング』が4月17日(土)に渋谷・ユーロスペースほかにて公開される。
過酷な食糧難から、危険を顧みず脱北する者が後を絶たない北朝鮮の凄惨な実情を、『火山高』(01)のキム・テギュン監督が映画を通して描きたいと企画。実際に脱北者100人以上に取材を重ね、スタッフや出演者らにも脱北者を加えたほか、脱北ルート撮影のために北朝鮮の友好国でもある中国、モンゴルで極秘撮影を敢行するなど徹底的なリアリティーにこだわった。
だが、最大の問題は思わぬところに。北朝鮮との友和を図り、脱北者に冷淡だった当時のノ・ムヒョン政権の影響だ。これにより撮影を妨害されるだけでなく、映画が政治利用される恐れがあったため、この企画は秘密裏に進められた。
その後、イ・ミョンバク大統領に政権交代したことにより2008年にようやく韓国での公開が認められ、さらに第81回アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表作品に選出された。世界で初めて、北朝鮮の人々のリアルな日常と強制収容所の実態を描ききった本作は、韓国はもちろん世界中に大きな衝撃を与えた。
数々の苦難により企画から公開まで、実に4年の極秘期間を要した『クロッシング』。日本での公開キャッチコピーは“命がけのロードショー”だが、それは映画のストーリーだけではなく、まさに製作者たちの“思い”も込められているのだ。【トライワークス】
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