坂本龍一が記者会見、野田洋次郎や二階堂ふみがレッドカーペットに登場!第68回ベルリン国際映画祭前半ハイライト
現地時間15日より開幕した、第68回ベルリン国際映画祭。最高賞である金熊賞を巡って、世界中からエントリーされた新作映画17本がコンペティション部門で上映される。初日には、『ラン・ローラ・ラン』や『クラウド アトラス』で知られる映画監督トム・ティクヴァ(ドイツ)を審査員長に、プロデューサーのアデル・ロマンスキー(アメリカ)、カメラマンのチャマ・プラド(スペイン)、女優のセシル・ドゥ・フランス(ベルギー)、映画評論家ステファニー・ザカレク(アメリカ)、そして作曲家の坂本龍一(日本)の6人の審査員を迎えた記者会見が行われた。
「この街で、ほかの月には人が目を向けないような問題作を、大勢の人と観て分かち合う。長編フィリピンの政治ミュージカルを観る、なんてイベントは世界のどこにあるでしょうか? これこそベルリン映画祭の偉大な意義なのです」と力強くティクバ審査員長はコメントした。時代とともに生きる映画を上映するベルリン国際映画祭は、一般へのチケット収益が映画祭の運営費の一部となっている。ベルリンに留まらずドイツという国をあげての文化的行事という点で、世界の他の映画祭とは異なったカラーを持つ。
「ベルリン映画祭の審査員として招待され、とてもエキサイトしています。これから審査員の仲間と19本の映画を観るのを楽しみにしています。政治的な価値観ではなく、芸術的な視点から映画を評価したと思います」と語ったのは坂本龍一。また、会見では先日他界した作曲家のヨハン・ヨハンソンさんへの追悼の意を表した。世界的に大成功を収めたイエロー・マジック・オーケストラのメンバーとして、『戦場のクリスマス』の俳優として、そして多くの映画音楽をこの世に送りだしてきた作曲家とて、海外での人気も非常に高い。審査員としてだけでなく、タレント・キャンバスという若手育成イベントや、小津安二郎監督の修復作品の上映会の壇上挨拶にも参加。またスティーブン・ノムラ・シブル監督のドキュメンタリー『坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK:async』も上映されたり、多忙なスケジュールをこなした。
コンペティション部門のオープニング作品はウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』が上映された。1960年代の視点から20年後の日本を描くストップモーション・アニメーションだ。アニメーション映画がオープニング作品に選ばれるのはベルリン映画祭史上初のこと。“犬インフルエンザ”が大流行し、それを阻止するため犬はゴミの島“犬ヶ島”に送り込まれる時代となったという設定。そこへ愛犬を探しに来る12歳の少年と犬たちの闘争アドベンチャーだ。犬をビル・マーレイやスカーレット・ヨハンソンや海外キャストが、人間をRADWIMPS・野田洋次郎や夏木マリら、おもに日本人キャストが吹き替えている。
監督の邦画への愛から生まれた映画で、日本文化が独創的な感覚で取り込まれ楽しくも美しいアンダーソン監督の世界がスクリーンに広がる。可愛らしいパペットやミニチュア・セットが目を奪うエンタテインメントに観客の反応も上々。上映前に行われたレッドカーペットでのパフォーマンスも大盛り上がりで、タキシード姿の野田洋次郎、漆黒の着物に身を包んだ夏木マリらにも大歓声が飛んだ。
ベテランの新作や新しい視点を切り開く作品を集めるパノラマ部門のオープニングに選ばれたのは、行定勲監督の『リバーズ・エッジ』。監督と主演二階堂ふみ、吉沢亮がベルリン入りしてレッドカーペットを歩き、ベルリンの観客を沸かせた。
同パノラマ部門では、ほかに黒沢清監督の『予兆 散歩する侵略者 劇場版』も上映された。日本からは、若手支援をモットーに実験的作品にも目を向けるフォーラム部門に想田和弘監督の『港町』、清原惟監督の『わたしたちの家』、山中瑶子監督の『あみこ』、 佐藤満夫・山岡強一監督の『山谷―やられたらやりかえせ』が、ジェネレーション部門には富名哲也監督の『Blue Window Blows』が上映されるほか、ピンク映画で活躍した女優・佐藤啓子の特集なども組まれている。映画祭の開催は、現地時間25日まで。
取材・文/高野裕子