山寺宏一が明かす「僕のヒーロー」トップランナー支える“まだまだ”の精神
いよいよ公開となったヒーロー大集合のマーベル最新作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのメンバーが参戦している。“ガーディアンズ”のリーダー、ピーター・クイルの日本語吹替えを担うのは山寺宏一。声優たちが選ぶ「本当にスゴイと思う声優ランキング」でも第1位に輝くなど、誰もが認める“声優界のヒーロー”だが、山寺本人は「声優としての力は、まだまだ足りない」とキッパリ。トップランナーの胸の内は、尊敬する人への憧れや初心を忘れない熱意にあふれていた。
最凶最悪のラスボス、サノスを倒すために“アベンジャーズ”が集結し、人類の命運をかけた壮絶なバトルに身を投じる姿を描く本作。“アベンジャーズ”最大のピンチに、“ガーディアンズ”のメンバーが強力な助っ人として加勢する。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17)でもピーター役を演じてきた山寺は「アベンジャーズに参加できると聞いて、ものすごくうれしかったです!」と声を弾ませる。
なにより、彼自身がシリーズの大ファンだそうで「僕は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が大好きなんですよ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を知らなくて『インフィニティ・ウォー』をご覧になる方もいると思うんです。今回『なんだコイツら、おもしろいな!』と思ってくださって、過去作も観ていただけたら本当にうれしいです」と愛を炸裂させる。
数々のヒーローが登場する本作だが“ガーディアンズ”の魅力は「ノリのよさ」だと話す。「“ガーディアンズ”のメンバーが、“アベンジャーズ”の世界に馴染むのかなと不安だったんですが、彼らは今回もいい感じに揉めてます(笑)。“ガーディアンズ”が出てくると空気が変わるし、新しい風を吹き込んでいますね」としっかりと持ち味を出しているといい、「“ガーディアンズ”はみんなこじらせているメンバーばかり。今回だって“最大のピンチ”だと言っている時に、どうでもいいことで揉めているんです。『ピーターが太った』とかそんなことですよ(笑)!大人気ないですよね。でも僕も大人気ない人間なので、そこが大好きなんです」と共感もたっぷりの様子。
山寺と言えば、『劇場版 ヤッターマン 新ヤッターメカ大集合!オモチャの国で大決戦だコロン!』(09)では1人16役をやり遂げ、「ポケモン」映画にはサトシ&ピカチュウ以外で唯一20年連続で出演、青年から老年まで幅広い世代を演じ分けるなど、伝説に事欠かない“七色の声を持つ男”。しかし当の本人からは「僕なんてまだまだ」との言葉が飛びだす。「ハリウッド映画の吹替えだって、いっぱいやりたいんです!エディ・マーフィやジム・キャリーも最近ではなかなか演じられる機会がないですからね。そういった意味でも、ピーター役はすごくうれしくて、大事なお仕事なんです。なかなかハリウッド映画の吹替えが回ってこないのだって、声優としての力がまだまだ足りないからだと自覚しています」。
さらに「後輩たちにも、人気も実力もある人がいっぱいいます。一方では80代で頑張っている先輩もいる。自分なりにベストを尽くしていきたいなと思っています」と話す彼から見えるのは、いつも謙虚な姿勢。「必ず、求められること以上のものをお返ししたい」と誠心誠意、期待に応えようとするのがモットーだ。
山寺ほどの人気声優から「まだまだ」と聞くと背筋が伸びる思いがするが、「僕にとってのヒーローは、野沢雅子さんと戸田恵子さんなんです」と刺激をくれる存在を告白し「お2人のような、とんでもない方が身近にいるので!」と楽しそうに笑う。「『ドラゴンボール』でも野沢さんとご一緒していました。あのパワーを目の当たりにすると、いつも『すみません!』と言いたくなるぐらい(笑)。野沢さんと同じことをやったら、僕は明日から声が出なくなるんじゃないかな」。
「戸田さんは声のお仕事だけではなく、舞台もあれだけパワフルにやられて、お客さんを感動させている。いつも周囲への気配りを忘れない方で、人間としても役者としても尊敬しています。お2人を見ていると『僕も頑張らなきゃいけないな』といつも励まされます」と彼女たちの存在が「まだまだ」「もっともっと」と背中を押してくれるという。インタビュー中もユーモアを交えながら、熱心に映画や声優業への思いを語る山寺の周囲は、明るい笑いに満ちあふれる。謙虚でエネルギッシュな姿勢がたまらなく魅力的だが、「僕にある唯一の武器は声ですからね。仕事くらいちゃんとやらないとバチが当たる!家に帰ったらだらしないもんですよ!」とニッコリ。走り続ける山寺宏一から目が離せない。
取材・文/成田 おり枝