『友罪』の生田斗真と瑛太が語る、少年Aの事件を伝える意味
神戸児童連続殺傷事件を彷彿させる薬丸岳の同名小説を、生田斗真と瑛太を迎えて映画化した野心作『友罪』(5月25日公開)。3度目の共演となる2人は、どのような想いで本作に臨み、“友罪”をどう受け止めたのか。
生田は瑛太について「演じる役柄や状況が違っても、想いは常に一緒です。僕たちは俳優部として、作品を良くするためにどういう表現ができるのかと、お互いに探り合いながらやっている感じです」と、揺るぎない信頼関係を口にする。
瑛太は、生田との共演作『土竜の唄 香港狂騒曲』(16)の撮影中に、本作のオファーを受けたそうで「台本も原作も読んでいない状態でしたが、『斗真とだったらやります』と、言っちゃってました」とおちゃめに語る。
少年犯罪の加害者とその家族、加害者を支援する人々を、それぞれの立場から掘り下げ、多層的に描いた本作。メガホンをとったのは、『64-ロクヨン-』2部作(16)の瀬々敬久監督だ。生田はジャーナリストの夢に破れ、町工場で働き始めた益田役を、瑛太は過去に殺人を犯し、いまは鈴木という偽名で働く犯罪者役を演じた。
生田はプロデューサー陣や瀬々監督から、本作に懸ける熱い想いを見せられ、出演を決めたそうで「僕自身も絶対にやらなければいけない題材だと思いましたし、それをエンタテインメントとして表現することが必要だと思い、覚悟を決めてこの映画に挑みました」と胸の内を明かした。
瑛太も「神戸の事件はリアルタイムで見ていて、背筋が凍りました」とした上で「同じ時代を生きてきた人間として、目を背けてはいけない問題だと思い、僕もエンタテインメントに関わる者として、なにか形に残すべきなんじゃないかなと思いました」と、生田と同じ想いで本作に挑んだよう。
瑛太は、少年Aの手記を読んで感じたという複雑な想いも告白。「少年Aがどんな環境で、どんな想いで、償い切れない罪を犯してしまったのか、僕の心のなかに、絶対的な否定ではないものが少しだけ宿ってしまったんです。この映画で賛否が生まれることで、考えてほしいし、こういったことが2度と起きてほしくないという願いを込めて演じました」。
生田は瑛太の役者としての魅力をこう語る。「本当に技術が高いし、それと同時に、獣のような荒々しさやぎらつきなど、ほとばしるエネルギーが混在している役者だと思う。瑛太のことはいつも尊敬しているし、刺激をたくさんもらえる。自分もふんどしを締め直すというか『自分もしっかりしなければ』という気持ちにさせてくれる存在です」。
瑛太も生田について「地に足をしっかりつけ、説得力をもった芝居ができる人」だと称える。「今回も斗真の多彩な側面を見させてもらった。僕がなにをやっても、斗真はちゃんと芝居で受けとめてくれるので、お互いに楽しめる相手です」。
過去にいじめられていた親友を救えなかったという罪悪感を抱える益田が、鈴木の過去を知ったあと、彼とどう向き合っていくのか?そして鈴木は、自分が犯した大罪をどう背負っていくのか?映画を観終わったあと、“友罪”というキーワードが心に波紋を広げていく。
生田は“友罪”について「本当に難しい、答えのない題材」だと言う。「実際に自分の友だちが、そういう事件を起こした犯人だったとしたら、自分はどうするのか?それでも友だちでいられるのか?そこが、すごく大きなテーマとしてあると思います。瀬々監督やプロデューサー陣からは、『人間とはこうあってほしい』という願いみたいなものを描きたいと言われました。その大部分を担っているのが益田で、鈴木に『君は生きなきゃダメなんだ』と訴える。もちろん、実際にはもっと辛い現実があるかもしれないけど、少しでも希望のある作品にしたいと、僕自身は思いました」。
瑛太の考え方も生田に近いものだった。「映画は現実の事件よりも少しマイルドにはなっているので、加害者を肯定していることになるんじゃないか?とか、遺族の気持ちを考えたことがあるのか?とか、そういうことも言われる映画ではあると思います。でも、僕たちがやるのは映画であり、フィクションなんだと。だから『人間、そんなに腐ってないよ』とか『ダメなやつばかりじゃないよ』とか、そういう想いもあり、僕はそこに可能性を感じました」。
取材・文/山崎 伸子