ダン・ブラウンがデビュー後初来日!『ダ・ヴィンチ・コード』トム・ハンクスとの裏話を披露
「ダ・ヴィンチ・コード」などで知られる世界的ベストセラー作家のダン・ブラウンがデビュー後初めての来日を果たし、5月29日に時事通信ホールで開催された講演会「AIと人類の未来」に登壇。ジャーナリストの池上彰とディスカッションを行なった。
ブラウンによる、ハーヴァード大の宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授を主人公にした「ラングドンシリーズ」は、全シリーズの日本国内の発行部数が1720万部を突破する大人気シリーズ。これまでトム・ハンクス主演で『ダ・ヴィンチ・コード』(06)、『天使と悪魔』(09)、『インフェルノ』(16)として映画化も実現している。この日は「ラングドンシリーズ」の最新小説「オリジン」の刊行を記念して講演が行われた。
敬虔なキリスト教徒の母と、数学者の父の間に生まれたというブラウン。処女作は「母に手伝ってもらって、5歳の時に制作した」と実物をお披露目。両親はとても尊敬し合っていたが「両極端な2人に挟まれるような子ども時代だった」ことが、いまテーマとしている“宗教と科学の関係性”を描くことに大きく影響しているという。
映画化もされた「ダ・ヴィンチ・コード」で一躍世界的ベストセラー作家となったが、「書いている時はトム・ハンクス主演で映画化されるなんて考えてもみなかった」とニッコリ。「ハリウッドの世界に飛び込んだのは、とてもぜいたくな経験。すばらしい人々と仕事ができた」と充実の表情を浮かべる。
映画の撮影現場も訪れたそうで「パリのルーヴルに行ったんだ。深夜2時に館内をめぐって、モナリザの前にたたずむことができた。おそらく一生に一度の瞬間」と現場でのエピソードを披露。「僕の両親も見学に来たんだ。『この死体を3フィート動かして』なんて言葉が飛び交うたびに、母が『映画の撮影現場は変わった場所だ』なんて言っていた」と奇妙な親孝行ができた様子。
また「スコットランドで映画の打ち上げパーティーがあった時には、『スコットランドの正装、スカートで来てください』と言われて。どう着るかもわからなかったんだけど、トム・ハンクスがはき方を教えてくれたんだ。ロン・ハワード監督は『ホテルの一室でトム・ハンクスにスカートをはかせてもらうなんてこと、想像したかい?』と言ってた。『ダ・ヴィンチ・コード』の執筆だけが、それを実現させる手段だったんだ」と裏話を語り、会場を盛り上げていた。
池上から、ラングドンがいつか日本に来る可能性があるかを聞かれると「ぜひラングドンを連れて来たい」と前向きな思いを告白したブラウンは「彼は日本の文化を理解すると思うし、日本の精神性をこよなく愛すると思う。私は日本の哲学や宗教をとても尊敬しているので、知識が足りないこともわかっている。もっと勉強しないといけないね」と知的好奇心たっぷり。
最新小説「オリジン」には人工知能も登場するが、「いままさに起きている科学と宗教の戦いを真っ向から描いた」とコメント。「いま科学の進歩はあまりにも早い」「キリスト教も進化しなければいけない」と持論を展開し、「『自分と違う意見の人は敵だ』という考えが増えている。意見の違う人同士が対話することが大事だ」と語りかけたブラウン。観客からの質問にも熱心に応じ、知性とユーモアで会場を大いに魅了していた。
取材・文/成田 おり枝