韓国映画初参加!「斬新な方向に音楽をもっていった」坂本龍一の衰えない創作意欲と挑戦
2014年7月に中咽頭がんを患っていることを発表するも、数ヶ月の治療期間を経て2015年には復帰を遂げた坂本龍一。現在も精力的に活動している彼が、初めて参加した韓国映画『天命の城』が6月22日(金)に劇場公開される。そして、坂本が本作の音楽や韓国映画への思いを語る映像が先行解禁となった。
坂本龍一といえば、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のメンバーとして活動し、国際的な成功を収め、以降はプロデューサー、アレンジャーとして国内外のアーティストへの楽曲提供やプロデュースを担当。さらに作曲家として映画音楽にも進出。『戦場のメリークリスマス』(83)では英国アカデミー賞の作曲賞を受賞し、『ラストエンペラー』(87)では日本人初のアカデミー賞作曲賞を獲得した。YMOのデビューから30年以上を経てもなお、世界中の音楽ファンやミュージシャンから高い支持を得ている“現代の巨匠”である。
初のドキュメンタリー映画の公開や実験的な新作も制作
近年も第88回アカデミー賞で監督賞や主演男優賞に輝いた『レヴェナント:蘇えりし者』(15)の音楽を担当。2017年には、2012年からの5年間に渡る彼の活動を追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』(17)が公開され、さらに同年春には8年ぶりとなるオリジナルアルバム「async」をリリース。その「async」発売を記念し、ニューヨークで2日間に渡って、観客計200名を前に実験的なコンサートを開催した。このプレミアムなステージを記録したドキュメンタリー映画『坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK : async』(17)も劇場公開されている。
韓国人ラッパーとの共作に、ソウルで大展覧会も実施中
そんな坂本が『天命の城』で韓国映画に初参加するのだが、彼と韓国のつながりは意外に強い。2004年1月にリリースしたマキシシングル「undercooled」では、韓国のラッパーMC Sniperをフィーチャー。また、今年の5月から10月まで、韓国のソウルで「Ryuichi Sakamoto Exhibition: LIFE, LIFE」と題した大規模展覧会も開催している。
西洋の交響曲に韓国の伝統的音楽を組み入れる
映画『天命の城』は、韓国で1636年に起こった「丙子(へいし)の役」を題材にした歴史大作。劇伴を担当した坂本は「長く韓国映画の音楽をやれたらと思っていました」と待望の挑戦だった様子で、さらに「アジアの映画にはみな興味がありますが、特に韓国の映画は力強いと感じます」と評価。メガホンをとったファン・ドンヒョク監督からはモダンな音楽を求められていたようで、坂本自身も「かなり斬新な方向に音楽をもっていきました」とコメントしている。また、映像内でも坂本が語っているように、劇中の楽曲は、現代西洋の交響楽を思わせる響きの中に、韓国の伝統音楽のニュアンスが伝わる壮大な仕上がりに。ドラマを彩る楽曲の数々が、映画のスケールを一層大きいものに感じさせてくれる。
65歳を超えてもなお、枯れるどころか、さらに旺盛な創作意欲で魅力的な楽曲を発表し続ける坂本龍一。音楽から現在進行形の彼の一端に触れることができる『天命の城』をぜひスクリーンで体感してほしい。
文/トライワークス