ハリウッド屈指の敏腕プロデューサーが断言!「映画の表現に不可能はない」

インタビュー

ハリウッド屈指の敏腕プロデューサーが断言!「映画の表現に不可能はない」

木城ゆきとの伝説的SF漫画「銃夢」をハリウッドで実写映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』が12月から公開される。『タイタニック』(97)や『アバター』(09)などで世界的ヒットメイカーとして知られるジェームズ・キャメロン監督と長年タッグを組み、キャメロンと共に本作のプロデューサーに名を連ねるジョン・ランドーに、常に進化を続ける映画技術の未来について聞いた。

『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)で今年のアカデミー賞を席巻したギレルモ・デル・トロ監督の紹介で、ランドーとキャメロンが「銃夢」に出会ったのは20年以上も前になる。それからキャメロンがメガホンをとる予定でプロジェクトが進むも、何度も延期となり、2人は『アバター』の製作を優先させることに。その後、キャメロンに代わりメガホンをとることになったのはアクション描写とヴィジュアルへのこだわりに定評のあるロバート・ロドリゲス監督。18年夏の公開に向けて準備が進められてきたが、今年に入り突然12月への公開延期が発表された。

公開延期の理由についてランドーは「2つの理由がある」と明かす。「1つ目は、非常にドラマ性の強いストーリーを持っているので年末の公開がふさわしいと思ったから。そして2つ目は、ヴィジュアルエフェクトを最高のレベルにするためにもっと時間をかけたいと思ったからだ」。約2時間の上映時間になる見込みの作品はほぼ完成に近づいており、現在はひとつひとつのヴィジュアルエフェクトのディテールを時間をかけてチェックしている段階だというのだ。

さらにランドーは、本作のために『アバター』を優先させたのだと明かす。「『アバター』は異世界の物語だったが、本作の舞台は未来の地球だ。だから主人公・アリータの“顔”を表現するヴィジュアルエフェクトを最大限にレベルアップしなくてはいけないと思ったんだ」。「映画はクローズアップが大事だ」と持論を展開しつつ、「『アバター』を先に作ることで、顔の演技のレベルが格段に向上したんだよ」と自信たっぷり。そしてもちろん『アリータ』で培った様々な技術を、今後4作品製作される『アバター』の続編に応用していく気も満々の様子。

つねに新しい技術に目を向け、積極的に作品に活用していくことで知られるランドーは、この数年での急激な映像技術の進化をどう感じているのだろうか?まず彼は「なぜ3Dにこだわるのか」という根本的ことから語る。「現実の世界が3Dなのだから、ものすごくクオリティの高い3D映像を作れば、観客はよりキャラクターや物語に入り込むことができるんだ。本当に良い3Dというものは、スクリーンという概念がなくなって、一つの世界を観ているようなもののことだ」。

そして映画界への進出も徐々に始まっているVRについては、少々懐疑的なスタンスを見せる。「新しいメディアとしてはすごくおもしろいと思うが、映画づくりの代わりにはならない」と断言。その理由として「映画は、カメラワークやカット割りを通して作り手が観客に『どこを観てほしいか』という指示を出しているんだ。『タイタニック』がVRだったとして、ジャックが死ぬ時に観客が違うところを見ていたら、物語が成り立たないだろう(笑)」。

「でも…」とランドーは前置きをして「『アバター』の惑星パンドラの物語を完璧に作りあげて、その世界をVRで体験しながら自分で物語を作ることができたら、作品の世界はどんどん拡がるということは否定できない。『アリータ』の世界も同じだ」と、なんらかの形で応用していくことに前向きな姿勢も示す。いずれは彼が手掛けるVRコンテンツが登場する可能性もゼロではなさそうだ。

結論として現時点での映画の最高到達点と言える技術は、すでに『アバター』公開時に一部の国で採用した「4D」であると明かすランドー。それでも彼は「時間をかけて正しく作れば、映画の表現に不可能はない」と力強く語る。「技術は毎日進化している。5年前や10年前に不可能だった物語を、いまでは容易に語れるほど進化しているんだ」。天才プロデューサーの頭の中にある“映画の未来”が、またしても世界を驚かせる日がやってくることは間違いない。

取材・文/久保田 和馬

関連作品

関連記事