『時かけ』の意外なエピソードも!?助監督が明かす、細田守作品の“ルール”とは?
興行収入20億円を突破した細田守監督最新作『未来のミライ』(公開中)の公開記念特別企画として、8月24日(金)まで角川シネマ新宿で開催中の「細田守フィルムフェスティバル」。そのスペシャルイベントとして14日、同劇場5Fに新たにオープンしたアニメギャラリーにて、細田守監督作品アニメーションスタッフによる「スペシャル座談会」が開催された。
登壇したのは『時をかける少女』(06)と『サマーウォーズ』(09)で助監督を務め、昨年大ヒットを記録した『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』でメガホンをとった伊藤智彦と、『おおかみこどもの雨と雪』(12)の助監督を務め、その後「ノラガミ ARAGOTO」などの人気アニメを手掛けるタムラコータローの2人。
初めて細田監督とタッグを組んだ当時、制作会社マッドハウスの社員だった伊藤は「『デジモンアドベンチャー』が好きだったので、細田さんが来ると聞いて自分から志願しました」と助監督になった経緯を明かす。同様に、フリーランスとして活動していたタムラも「僕は『細田さんの作品に興味ありますか?』と言われて二つ返事で引き受けました。はじめはマッドハウスから助監督として呼ばれていたんですが、気付いたら高円寺にスタジオを作ると言われ、別の会社になっていましたね(笑)」と、スタジオ地図の発足当時を振り返った。
あまり表舞台に出ることのないアニメーション作品の助監督について伊藤は「実写作品でいえばADですね。つまり、なんでも屋です」と解説。するとタムラは「細田さんがやっている演出は、芝居とかカメラアングルをアニメーターさんがあげてきたことに対してラフを入れていくんです。背景が流れるスピードとか、細かい部分を考える時間が監督にはないので、その辺りを担っています」と細田組の助監督の仕事内容について付け加えた。
しかし、作品の規模によって助監督の仕事内容も異なってくるようで「伊藤さんのときと僕のときとでは助監督のやり方が違うと周りのスタッフから言われました」と細田監督が大きな注目を集めるようになってから組んだタムラは明かす。すると伊藤は「僕が助監督としてやったのは細田さんを乗せた車を運転して川を見に行ったくらいです」と笑い「『時かけ』のラストシーンでカップルが通るのは、僕と細田さんが歩いていた横を通って、2人で『いいっすな』って話をしていたからなんです」と、ほっこりするエピソードを披露した。
また、現在公開中の『未来のミライ』を観た感想を訊かれた2人。同作で助監督を務めた石井俊匡は、伊藤が監督を務めた「僕だけがいない街」で第2話と最終話の絵コンテ・演出を担当した人物でもある。石井について「すごく優秀な人です」と語る伊藤は「家の中のシーンを描いているのか3Dで作っているのか疑問に思いましたね」とスタッフならではの視点で作品を語りつつ、石井の労をねぎらう。
するとタムラも「冒頭の外観をパンして寄っていくカット、素材分けをどうしているんだろうと考えたらゾッとしました」と語り「細田さんの作品は、お客さんがまだ感情移入していない冒頭5分に技術を見せるカットを入れて来るんです」と、助監督経験者だからこそ知る細田作品の特徴を明かす。さらにキャラクターに立体の補足影をつけない細田流の描き方や、料理のシーンを必ず同じアングルで描くなど、初期のころから細田監督が守りつづけている独自のルールについて徹底的に解説し、会場を驚嘆させた。
取材/久保田 和馬