トロント映画祭開幕!スター勢揃いの10日間、オスカーにリーチをかけるのはどの作品?
現地時間9月6日、第43回トロント映画祭が開幕した。開幕作品はクリス・パイン主演の『Outlaw King』。Netflixでストリーミングされるスコットランド映画が開幕作品となったのは、映画祭始まって以来のことだ。また、ドキュメンタリー部門ではマイケル・ムーア監督の『華氏119』が開幕作品として上映された。本作は北米では9月21日、日本では11月2日に公開が決定している。
週末にはスターが登壇するプレミア上映が数多く行われる。注目作品はブラッドリー・クーパーが初監督・主演、レディー・ガガが女優デビューする『アリー/ スター誕生』、カナダ出身のジェイソン・ライトマン監督がヒュー・ジャックマンと組み、1988年の大統領選挙で不倫報道の末に失脚した実在の政治家を描く『The Front Runner』、一昨年『ラ・ラ・ランド』で観客賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再度タッグを組んだ『ファースト・マン』など、連日連夜スターが登場する。また、近年のオスカーを賑わせた新進監督や俳優の最新作も多く上映される。『ムーンライト』(16)で知られるバリー・ジェンキンス監督の『If Beale Street Could Talk』や『それでも夜は明ける』(13)のスティーブ・マックイーン監督の『Widows』、『君の名前で僕を呼んで』(17)で主演を務めたティモシー・シャラメの最新作『Beautiful Boy』など注目作が目白押し。
日本映画では、すでにカンヌ映画祭で話題になった『万引き家族』(公開中)、『寝ても覚めても』(公開中)、ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアが行われた塚本晋也監督作、池松壮亮と蒼井優が主演する『斬、』、ジュリエット・ビノシュと永瀬正敏が主演する河瀬直美監督の最新作『Vision』などが上映される。
トロント国際映画祭は審査員が賞を決めるコンペティション部門を持たず、すべての上映作品の中から観客の投票で決まる「観客賞」が最高の賞となる。カンヌやヴェネチアなどの国際映画祭が一息つき、各映画会社がアカデミー賞を見据えた話題作を公開する秋から冬の賞シーズンを前に、正直な感性で作品を評価する観客の視点を大事にしていることが、トロントが“アカデミー賞前哨戦”と言われる所以だろう。トロント市内の劇場街を使って行われる映画祭では、レッドカーペットは全て一般客にも開放されており、どんな人でもスターの姿を間近で見ることができる。プレミア上映のチケットも全て一般販売されているので、今観たばかりの映画について語る監督や俳優たちの生のコメントを聞くことができるのもこの映画祭の醍醐味。この中から、来年のアカデミー賞へ向けて一歩リードする作品がでるかどうか、トロント市民や映画関係者も期待が高まる10日間となる。
取材・文/平井伊都子