レディー・ガガ主演『アリー/スター誕生』が米国で大反響のワケ
アカデミー賞作品賞にノミネートされた名作『スタア誕生』(37)の、リメイク版映画『アリー/スター誕生』が、米国で5日の公開早々大絶賛されている。物語は大スターの男性と出会い、結婚したヒロインが、人生のレールから外れて輝きを失う夫と、自分の成功との間に挟まれるという内容。
原作となった『スタア誕生』は、54年にはジュディ・ガーランド主演で、76年にはバーブラ・ストライサンド主演でミュージカル版としてリメイクされたことがある。今回は『世界にひとつのプレイブック』(12)などで有名なブラッドリー・クーパーと、ミュージシャンのレディー・ガガが出演して、3度目のリメイクとなる。本作はクーパーの長編映画監督デビュー作でもある。
Forbesの記事によると、本作の興収は公開された金曜日から日曜日で$41.25 million(日本円およそ47億円)を突破するそうだ。これは、制作予算およそ$36 millionとしては快調なスタートで、これからガガのファンたちや観客の口コミで、興収はますます上昇するだろうと言われている。
映画評論家たちからの評価も高く、映画批評家たちの評論を集積しスコア化するサイト「ロッテントマト」でも、米国時間8日の時点で90%の批評が称賛という数値を記録している。ニューヨーク・タイムズ紙の映画批評家のマノーラ・ダルジスが、本作を「ゴージャスなハートブレイク」と表現しているように、観客はたった2時間の間にヒロインと共に大恋愛と、切なく美しいハートブレイクを、心揺さぶる音楽と共に経験できる作品に仕上がっている。
クーパーは本作で監督に挑戦するにあたり、約4年間ほかのプロジェクトから身を引き、制作の準備と役作りに全力投球したそうだ。Vultureがクーパーに行ったインタビュー記事によると、ガガのアイデアで、劇中のパフォーマンスはすべてキャストが収録中に生で歌った本物の声が収録されたのだそうだ。クーパー演じるジャクソンの歌唱スタイルは、パール・ジャムのボーカル、エディ・ヴェダーなどをモデルにしているそうで、歌手ではないクーパーは歌唱力の特訓のために撮影の1年半前からボーカルレッスンを開始したそう。
劇中ではベテラン俳優のサム・エリオットが、クーパー演じるジャクソンの兄のボビー役を演じているが、説得力のある兄弟関係を描くために、クーパーはサムに似せた喋り方の訓練もコーチをつけて行ったという。結果サムが初めてクーパー演じるジャクソンの声を聞いた時は、あまりにも自分そっくりで驚いたそうだ。
80年以上前のクラシック映画のリメイクが、現代の観客の反響を呼ぶ理由は、20世紀初頭から世の中に大きな影響を与え始めたフェミニズムが、観客の信念と共鳴しているからだろうとバラエティ誌のオーウェン・グレイバーマンは分析している。本作は男性を敵視するフェミニズムという描き方ではなく、女性の社会的成功に伴い摩擦が起こる男女の役割や、ポップ・ミュージックが主流になっている現代の音楽業界の変化を観客に問いかけているのだ。
ガガが作曲に携わったサウンドトラックは、来年のアカデミー賞歌曲賞のノミネートは間違いないと言われている。それだけでなく、ガガの主演女優賞、クーパーの主演男優賞と監督賞のノミネートも既に噂されている。
この映画は「才能の発掘」をテーマにした作品であるが、主演の2人にとっても、ミュージシャンのガガは俳優としての一面を、俳優のクーパーは歌手と監督としての新しい才能を光らせた作品になったことは間違いない。『アリー/スター誕生』は、12月21日(金)から日本で公開される。
LA在住/小池かおる