“映画監督”ブラッドリー・クーパーが明かす、成功の秘訣は「映画への愛と好奇心」
世界的歌姫レディー・ガガが映画初主演を務め、スターダムを駆け上がっていくヒロインと彼女の才能を見出すシンガーとの愛をエモーショナルに描き出した『アリー/ スター誕生』が21日から公開中。それに合わせて、本作で監督・主演・脚本・製作の4役を務めたブラッドリー・クーパーが来日。名実ともにハリウッドを代表する俳優へと上り詰めたブラッドリーは、いかにして初めての監督挑戦を成功に導いたのか。その秘訣を聞いた。
「ハングオーバー!」シリーズで注目を集め、『世界にひとつのプレイブック』(12)、『アメリカン・ハッスル』(13)、『アメリカン・スナイパー』(14)と3年連続でアカデミー賞にノミネートされた彼は、クリント・イーストウッドをはじめ、デヴィッド・O・ラッセルやスサンネ・ビアなど多くの実力派監督と仕事を共にしてきた。
「これまで俳優として経験した仕事で得たものは、すべて今回の監督業に役立ったと思っている」と語るブラッドリーは、初監督作品を成し遂げるうえで一番重要だったものとして「好奇心だよ」と明かす。
「僕は、小さいころからなにかに執着するように映画を観てきた。その経験や、役者としての20年のキャリアでいろんなことを学んできたんだ。それらはすべて、好奇心があったからこそ、そしてなにより映画を愛しているからこそ、学ぶエネルギーが持てたと言ってもいい。だから僕は、こうして自分の世界を作りあげることができたのだと思っている」と力強く語った。
それでも監督と同時に主演を務めあげることには苦労があったようで「アーティストとしての自分が強く要求される現場だった。もっと様々なことを考えなくてはいけないと、常にプレッシャーと闘うような仕事でした」と振り返る。「でも自分の性格的にも、そして年齢的にもいましかなかった。すべての責任を担うだけのものがあり、自分で綴りたい物語があった。だから僕は勇気を持って、監督という大変な仕事に向き合うことができたんだ」。
早くも監督2作目となる、作曲家レナード・バーンスタインの伝記映画が準備段階にあると報じられているブラッドリー。そちらでも監督と主演を務めるという話もあるが「まだ新しいプロジェクトについては話せないんだ」と微笑む。そして「今は監督をしたい気持ちが強くて、俳優の仕事はちょっと後回しになる。この先20本の映画に出演するよりも、5本の映画を撮りたいんだ」と、映画監督としての道を突き進んでいくことを宣言。
昨年のヴェネチア国際映画祭でお披露目されて以降、高評価を獲得している『アリー/ スター誕生』は、先ごろノミネーションが発表された第76回ゴールデン・グローブ賞で作品賞<ドラマ部門>はもちろん、監督賞と主演男優賞候補にも名を連ねた。もしアカデミー賞監督賞にノミネートされることになれば、初監督作品としては『フィクサー』(07)のトニー・ギルロイ監督以来11年ぶりの快挙となる。
「認められることは本当に素敵なことです」とゴールデン・グローブ賞ノミネートの喜びを語るブラッドリーは「アカデミー賞はどうなるか、まだ見当もつかないな」と満面の笑み。師でもあるクリント・イーストウッド以来の監督賞&主演男優賞ダブルノミネートを果たす可能性も日に日に大きくなっているだけに、注目は尽きない。
取材・文/久保田 和馬