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ゴールデン・グローブ賞授賞式直前!是枝&キュアロン監督も参加したシンポジウムで潮流を読む

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ゴールデン・グローブ賞授賞式直前!是枝&キュアロン監督も参加したシンポジウムで潮流を読む

是枝裕和監督が語った『万引き家族』の成り立ちに拍手喝采が起きた
是枝裕和監督が語った『万引き家族』の成り立ちに拍手喝采が起きた

今年のアメリカ映画界の賞レース動向を占う上で最も重要な賞であるゴールデン・グローブ賞の授賞式を控え、ハリウッド外国人記者協会主催の外国語映画賞シンポジウムが開催された。シンポジウムには、日本から『万引き家族』(公開中)の是枝裕和監督、メキシコから『ROMA/ローマ』(Netflixにて配信中)のアルフォンソ・キュアロン監督、ドイツから『Never Look Away(英題)』のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、レバノンから『Capernaum(原題)』のナディーン・ラバキー、そしてベルギーから『Girl(原題)』(初夏公開予定)のルーカス・ドン監督の5監督が登壇した。

勢揃いした5人の監督。右からフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク、是枝裕和、アルフォンソ・キュアロン、ナディーン・ラバキー、ルーカス・ドン
勢揃いした5人の監督。右からフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク、是枝裕和、アルフォンソ・キュアロン、ナディーン・ラバキー、ルーカス・ドン

満席の会場から大きな拍手で迎えられた監督たちは、司会者からそれぞれ質問を受けた。『ROMA/ローマ』のキュアロン監督には「どうしていま、自らの家族の物語を描いたのか」という質問が寄せられ、「“家族”というのは現在の世の中で唯一機能している組織だから」と答え、いまこの題材を選んだ理由は、「年齢的なこと」であり、「自分が何者であるか、どこからきたかを悟り、自分自身の物語に向き合うことができた。物語の80%〜90%は私とリボ(主人公クリオのモデルになった実在の家政婦)の記憶から作られているけれど、この映画はストーリーが重要な作品ではなく、思い出やテーマを描く作品だとはっきりしていたので、この時代の状況に合うように創作している部分もある。だが、いいかな。思い出とは最大の嘘だ(場内笑)。少なくとも、これらの嘘はリボと姉たちとは共有されていたものだ。だから、実際に起きたことそのものとは言わないよ」と、今作は自伝ではなく、半自伝的作品であり、史実を語ることに重きを置いていたわけではないと述べた。

リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林らアンサンブルキャストも称賛された『万引き家族』
リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林らアンサンブルキャストも称賛された『万引き家族』[c]2018『万引き家族』 製作委員会

同じ家族の物語でも、“疑似家族”を扱った『万引き家族』については、司会者から「どうしてこのような物語を描きたいと思ったのか」という質問が寄せられた。是枝監督は、「この10年間ファミリードラマをやってきた中で、血縁を越えて繋がろうとする人たちの物語をやってみたいと思った。血縁以外で繋がるとしたら何だろうかと自分なりに考えたことがスタートでした」と答え、「彼らが報道という形で世間に知られるようになったときに、おそらく私たちは『あんなもの家族ではない』と批判し、劇中同様に家族は解体されていくと思う。では、私たちが彼ら以上に深い繋がりを持っているのか、と映画の登場人物から逆に問いかけられるような作品を目指した」と続けた。

また、リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林らのアンサンブルキャストに賞賛を送り、彼らとの映画づくりについての質問が寄せられた。是枝監督は、「普通は時間軸に沿って撮影しますが、実は海のシーンがキャストが揃って撮った最初のシーンだったんです。その時に撮ったシーンの役者の演技を観てイマジネーションを膨らませて脚本を書くという特別なやり方をしています」と制作秘話を明かした。この回答に満場の会場からは大きな拍手が起きた。続けて、「その映像を繰り返し観ながら、演出するというよりは“発見していく”作業がありました。海のシーンともうひとつ、土砂降りのシーンもそうで、子どもたち2人と『とりあえず走ろう』と雨の中を走って帰った時に、家で親たちがなにをしていたらおもしろいだろうかということを、走るシーンを撮ってから考えました。こういう撮り方を許してくれる役者とプロデューサー陣に支えられてできた方法でした」と明かした。

一家は、樹木希林演じる初枝の年金を頼りに暮らしている
一家は、樹木希林演じる初枝の年金を頼りに暮らしている[c]2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

質問が樹木希林の醸し出す家族の暖かさに及ぶと、「希林さんの話をすると長くなってしまうのですが」と前置きしたうえで、「台本を読んで現場に来られる前に、『この映画はあなたが人間の肉体を撮ろうと思っている映画だということがわかったから、私の役割としては老いた肉体を晒す必要がある。入れ歯を外すことと、髪の毛を洗わずに伸ばしたい』と提案があり、そのまま役作りに反映していただきました。僕以上に僕がこの映画でやろうとしていることを鋭く把握して、それを自分の役作りだけでなく作品全体の演出に関してもフィードバックしてくれる役者がいるというのは、監督にとって幸せな環境だと思います。その彼女が昨年の9月に亡くなってしまい、喪失感からどうやって次の作品を撮っていくかということをこの先考えなくてはいけない。とても良い、役者と監督の関係を超えた共同作業がこの作品では実現できたと思います」と一気に語った。

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