『アリータ:バトル・エンジェル』のロバート・ロドリゲスが語る、盟友キャメロンとの仕事
愛を知り、強くなっていくアリータの成長譚
アリータは、イドに救けられた当初は記憶を失っていて、庇護されるような存在だったが、やがて自身の戦闘能力に目覚め、愛を知り、外見だけでなく内面も大人びていく。アリータが戦いで負傷した際に、身体を最先端のボディにバージョンアップしたことも一因ではあるが、ロドリゲスはそれ以上に本作を彼女の成長譚として見せたかったから、表情も後半にかけて変化させていったという。
「アリータの実年齢は18歳だったが、最初は記憶がないから、イドの13歳だった娘の体を装着されたことで、かなり幼く思える。でも、僕には娘がいるからわかるんだけど、女の子はあっとういう間に育ち、ある日気がつくと18歳になっている。18歳と言えばもう大人で、自分がなにをしたいのかもわかっている。父親としても子離れしないといけない時期になるから、僕もそこを意識的に演出した。最初は、まるで自分が武器であるかのように攻撃することしか考えていなかったアリータだけど、いまはイドという家族やボーイフレンドのヒューゴがいて、自分が持っている力を世の中をより良くするために使おうとするんだ」。
ロドリゲスと言えば、低予算ながらも高い評価を受けたインディーズ映画『エル・マリアッチ』(92)で映画監督としてのキャリアをスタートさせ、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)などのアクション・ホラーやフィルム・ノワール、「スパイキッズ」シリーズなどのファミリー映画まで、守備範囲がかなり広い。自身の作風については「僕はずっと低予算の映画を撮ってきたので、お金をかけていないのに、かけているように見せるトリックを知っている」という点が強みだという。
「この映画でもそのテクニックは存分に使っている。ジムも『もしも僕がこの映画を撮っていたら、2倍以上の予算を掛けていたと思う』と言ってくれた。ハリウッドで長く監督をやっていく秘訣として、コストを安く抑えつつ、クオリティを維持することはすごく重要だと思っているんだ。そうするとクリエイティブにおいての自由が確保できるし、自分がやりたいことをトータルでコントロールしやすくなると思う。そしてもう1点、大作をやるのなら親友とやること。今回はジムと組めたから良かったけど、スタジオ主導でやっていたら、上手くいかなかったんじゃないかな。今回のボスがジムだったからこそ、本当に楽しく仕事ができたよ」。
キャメロンとロドリゲスの盟友タッグで手掛けられた『アリータ:バトル・エンジェル』は、原作者の木城ゆきとも「構成がすばらしいし、すべてが名シーンで無駄なシーンが1つもない」と手放しで絶賛した。アリータの勇姿を、ぜひ大スクリーンで観てほしい。
取材・文/山崎 伸子