映画ニュース 2019/2/24 22:01

明日に迫った第91回アカデミー賞！前日リハーサルと候補者登壇のシンポジウムが開催

そして、23日の土曜日には長編アニメ映画賞のシンポジウムが行われた。外国語映画賞とは異なり、1作品ずつ映画の抜き出し映像を上映しクリエイターを呼び込むスタイルで、『未来のミライ』(18)からは細田守監督と齋藤優一郎プロデューサーが登壇した。

モデレーターを務めた『トイ・ストーリー』(95)『ヒックとドラゴン』(10)などで知られるプロデューサーのボニー・アーノルドから、「『未来のミライ』は細田監督作品として最後の2Dアニメーション作品になると聞いているが、アニメーションの未来についてはどう考えているか」という質問が投げかけられた。細田監督が「僕の作品としては、美術を紙に絵の具で描くのが今作が最後ということです。僕の作品のあと、宮崎駿監督の新作の現場が、日本のアニメーションにおいて紙に絵の具で描く技術の最後になると言われています。すごく問題だと思っていて、僕は紙に絵の具で美術を描く技術を使いたいし、キャラクターも手で描くべきだと思っています。実際にそれがそうできなくなる状況に困っています。もっと手描きでアニメーションを描く必然性のある作品があると思うので、そういう時に(作品を作れる)現場がないというのに本当に困っているんです」と訴えた。

続けて細田監督は、『美女と野獣』(91)のアニメーションを手掛け、現在はNetflixでアニメミュージカル『Over The Moon」を製作しているグレン・キーン監督を訪ねた際に、「グレンさんも手で描きたいという人で『どうしよう』『でも諦めないでがんばろう』みたいな話をしました。グレンさんは30年前から尊敬しているアニメーターで、『美女と野獣』は最高の作品だと思っています。」と明かし、会場からは大きな拍手が起きた。

長編アニメ映画賞にノミネートされた監督・プロデューサーたちPhil McCarten / [c]A.M.P.A.S

同じく長編アニメ映画賞にノミネートされている『犬ヶ島』(18)からは、プロデューサーのスティーヴン・レイルズが登壇。現在、ウェス・アンダーソン監督はフランスで新作の映画を撮影中で、アカデミー賞に参加することができないことを詫びた。

アンダーソン監督とは06年からのつきあいになるレイルス氏は、『犬ヶ島』の企画開発について「ウェスは黒澤明監督の作品に代表されるような日本映画と、19世紀の日本の木版画にとても興味を持っていた。ウェスと(共同脚本の)ジェイソン・シュワルツマンは長い時間をかけて、近未来の日本の犬たちが暮らすゴミの島はどんな感じだろうかと話し合っていた」と、秘話を明かしていた。

毎晩のようにパーティが開かれ、アカデミー賞授賞式前日にはサンタモニカにてインディペンデント・スピリット賞が行われており、お祭り騒ぎが続いているロサンゼルス。今週のオスカーウィークに行われているシンポジウムは一般にも解放されており、チケット代はわずか5ドル(約554円)で、学生にはさらに割引がある。新聞、雑誌、テレビ、そしてウェブサイトではここ数週間ずっとオスカー予想が繰り広げられ、誰もが思い思いに2018年観た素晴らしい映画の話をしている。アカデミー賞は一部の人たちのためのイベントではなく、映画を愛し映画館に通う全ての人々のためのイベントなのだ。

取材・文/平井伊都子