『武士の家計簿』は実在する江戸時代の家計簿から作られた異色時代劇
『13人の刺客』『桜田門外の変』『雷桜』『最後の忠臣蔵』と、立て続けに時代劇が製作された今年後半の日本映画界。ここ10年ほど続いている藤沢周平時代劇のブームも手伝ってか、ついつい“時代劇=刀で斬り合う武士の物語”だと思ってしまいがちだ。
そんななか、ユニークなネタを原作にしているのが、12月4日(土)に公開される『武士の家計簿』。なんと、この原作は、日本近世史と日本社会経済史を専門とする歴史学者・磯田道史が、武士の生活を分析、研究した歴史教養的新書「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」が原作になっているのだ。
たまたま著者が発見した“加賀藩の会計担当・猪山家の家計簿”を研究対象にしたという同書の背景も異色だが、劇中に取り入れられている当時の武士たちの経済的事情もおもしろい。一般市民よりも身分が格上なだけに、恥はかけまいと冠婚葬祭などの交際費を下げられず、それを維持するために年収の倍近くもの借金を抱えていたのだ。さすがに、それではまずいと家財道具を売り払い、食事も質素なものに変えてまで家名を守ろうとする彼らの姿には涙をそそられる。
でも、なんだかこれって、国の借金が900兆円を超えて、税金の無駄遣いを減らそうと仕分けに奔走する現在の日本にそっくりなのだ。なにも刀で斬り合うだけが時代劇じゃない。現代を生き抜く知恵を教えてくれる時代劇にも注目しておこう。【トライワークス】
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