『レオニー』松井久子監督インタビュー「エンディングをじっくり見ていただきたい」
国境を越え、時を越えて世界から尊敬される天才彫刻家イサム・ノグチ。その母レオニー・ギルモアの波乱に満ちた69年の生涯を、松井久子監督が夢を掲げて7年の歳月をかけて実現させた日米合作映画『レオニー』。いよいよ11月20日(土)に公開を迎えるなか、松井久子監督がインタビューに応えてくれた。
――日本とアメリカでの撮影について聞かせてください
「アメリカと日本の100年前を描いているので、正確な時代考証を行うことでどちらの国の人が観てもおかしくない作品にしたいと思っていました。本作はそういう部分も堪能していただけると嬉しいです。日本では日本のロケ地とクルー、アメリカではアメリカのロケ地とクルーで撮影し、まるで2つの映画を撮影したようです。私と撮影監督の永田鉄男さんだけが通しで撮影しました。総勢400人の方々がこの作品に関わってくれているので、エンディングもじっくり見ていただきたいと思います。とても貴重な経験でした」
――ハリウッドでの撮影はいかがでしたか?
「全てのスケールが大きかったですね! トイレのトラックも一台で10人入れるくらい(笑)。アメリカに来て、映画を作っているなあというのはすごく感じました。アメリカの現場は完全なハリウッド方式だったので、労働時間も6時集合、18時終わりできっちり決まっていました。皆で朝ご飯を食べながら打ち合わせして。朝ご飯から一日が始まります。ケータリングもチョイスできましたし、休憩時間も朝とお昼で1時間ずつあったので、健康的で体力的にも疲れませんでした。日本のロケ弁とは違いますね(笑)。やっぱり、エミリー・モーティマーさんと中村獅童さんと食事することが多かったです」
――アメリカでも上映を行ったんですね
「撮影した映像を軽く編集した段階で、一度お客様に観せています。これはアメリカと日本の大きな違いだと思います。映画はお客様のものという考えのもと、反応を見ながら、どこが問題で、感情移入できたシーンはどこなのかというのを確認しました。そうして少しずつ修正していくという作業を3回ほど行っています。お化粧前の顔を見せるみたいで嫌でしたが(笑)。アメリカではそれが当たり前みたいです。完成前の作品を観せるというのは日本ではないですよね」
――作品を製作するうえで楽しかったことを聞かせてください
「クランクインまで6年かかっているので、その点は苦労しました。ただ、それ以降は楽しいことばかりでしたね。やっと映画作りが出来るんだ!となった時は本当に嬉しかったです」
――完成前の作品を上映してみていかがでしたか?
「編集のペースが一番気になりました。たくさんの人に言われると『そうか』と納得することが多かったですが、お客様にいくら言われても外したくないシーンもあって。ラストのモエレ沼公園のシーンは絶対に切りたくない!とか。自分のやりたいことがより明確になることもあり、すごく勉強になったと思います」
先日行われたジャパンプレミアでは皇后陛下も御臨席された本作。そして今日11月17日はイサム・ノグチの誕生日(存命であれば105歳)でもある。この母、レオニー・ギルモアなくしてイサム・ノグチの誕生はなかった。日露戦争の影響下、人種差別を乗り越え、我が子の将来のために、言葉も通じない日本へ行くことを決断したレオニー・ギルモア。そんな偉大なら母の愛を実感できる素晴らしい作品を是非劇場で堪能してもらいたい。【Movie Walker】