竹内まりやが語る、『ダンボ』の物語から受け取った“欠落感”を変える愛の力

インタビュー

竹内まりやが語る、『ダンボ』の物語から受け取った“欠落感”を変える愛の力

デビュー40周年の竹内まりやに、独占インタビュー!
デビュー40周年の竹内まりやに、独占インタビュー![c]2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

「ダンボの造形にリアリティがあるからこそ、観客の心に届く」

竹内が本作でもっとも心奪われた部分として挙げたのは、ダンボが見せる豊かな表情だ。「時々CGであることを忘れさせるような瞬間があったんです。目の輝きや困っている目、悲しい目とか、いくら現代のテクノロジーを駆使したとしても、それを表現することは相当大変なことだったと思います」。本作の劇中では、アニメーション版と同様に一切セリフを発しないダンボ。表情によってその感情を表すという点では共通しているが、アニメーション版との大きな違いは大粒の“涙”を流すことなく、微小な目の動きだけで表現したということだ。「初めてCGのダンボを見た時は、目がギラッとしていてちょっと怖そうだなと思っていたんです。けれど実際に動いているのを見たら、リアリティがあるからこそ、観客の心に届くものがあるのだと感じました」。さらに肌の質感やポテポテした重量感についても言及した竹内は、そうしたディテールの部分にバートン監督のキャラクターへの想いを感じ取ったのだという。

「CGであることを忘れさせる」と竹内が驚くほど表情豊かなダンボ
「CGであることを忘れさせる」と竹内が驚くほど表情豊かなダンボ[c]2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

それは人間のキャラクターの描き方についても同様で、「コリン・ファレルさんが演じているホルトにも彼の心の中にある“喪失感”とか“欠落感”を感じました。人はみなそれぞれ“欠落感”のようなものを持っているものだと思うのですが、人間同士の愛の力であたたかいものに変わっていく。それはダンボ親子もホルト親子も同じ。2組の親子をリンクさせることで、アニメの時にはダンボ親子がクローズアップされていたものを、人間社会にも置き換える。それがこの映画の新しさなのかもしれません」。

そして「いまの子どもたち、特にアニメ版を知らない子どもたちがこの作品を観た時にも、純粋に面白いと思って『ダンボ』の世界に入っていけるのではないかなと思います。大きい耳を笑われているダンボを見たら、『可哀想だな…』と思い、頑張って飛んだ姿を見れば『わあっ、すごい!』ってなるはずですよ」と、イメージした子どもたちの姿を自ら再現し、にこやかに拍手する竹内。「本当にファミリーで観て和める、楽しいファンタジー映画になっている。そこはやはり、バートン監督の良心を感じる部分ですね」。

「映画にはクリエイティビティを刺激する、ほかのものに代えられない魅力があります」

話題が自身の映画鑑賞スタイルにおよぶと、「私は断然劇場ですね。スケジュールに追われていても、家でDVDで観るよりはスクリーンで、じっくり座って観たいタイプです」と“劇場派”宣言。そんな彼女が最近観た作品は、興行収入128億円を超える記録的大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』(公開中)だという。「深夜に上映している劇場にふらっと出かけて、とりあえずポップコーンを買って観る、というのがすごく好きです」と明かす彼女は、渋谷のル・シネマや恵比寿のYEBISU GARDEN CINEMAなどのミニシアターにも頻繁に足を運ぶのだそう。「映画には『曲を作りたいな』と思わせる要素がすごくあるんです。画面に映るどこかの部屋の明かりひとつで、何かストーリーが生まれそうだなと感じたり、クリエイティビティが刺激されることが多くて。映画はほかのものに代えられない魅力を持っていますよね」。

【写真を見る】竹内まりや、「私は断然、“劇場派”」と宣言!夫、山下達郎との映画ライフも明かす
【写真を見る】竹内まりや、「私は断然、“劇場派”」と宣言!夫、山下達郎との映画ライフも明かす[c]2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

最近“映画の魅力”を実感したエピソードとして彼女は、自身のライブ映像を映画化した『souvenir the movie~MARIYA TAKEUCHI Theater Live~』を観に行ったときのことを振り返る。昨年秋に竹内のデビュー40周年を記念して劇場公開された同作は、ファンの間で伝説として語り継がれる2000年の武道館ライブや、33年ぶりに行った全国ツアーの模様に加え、貴重な撮り下ろし映像などを盛り込んだ作品だ。「東京で上映される最後の日だったので、スタイリストの方と一緒に『観に行っちゃおうか』と丸の内TOEIに行ったんです。音がどう鳴っているのだろうかとか、劇場にどういう人たちが観に来てくれているのか興味を持って行ったのですが、上映が終わったとたんに誰からともなく一斉に拍手が沸き起こって、ちょっと涙が出そうになりました。きっとみなさんそれぞれに歌との思い出に浸りながら、自分の人生を振り返って下さったのかなって、すごく感激しました」。

さらに竹内は「映画は1人で観るのがすごく好き」と明かし、夫の山下達郎との映画ライフについて告白。「2人揃って観に行くことはあまりなくて、別々に観に行ってそれぞれ感想を報告し合うのが好きなんです。私が観て良かったら『あれ絶対観なきゃダメ』と勧めたり、逆に達郎が観て『あれは良かったよ』って言われたら私も行ったりという感じですね。時々お互いが買ったDVDを家で観ることもありますよ」と明かし、映画鑑賞が夫妻のライフスタイルのなかに溶け込んでいることを伺わせた。

取材・文/久保田 和馬


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