「ほとんどお酒ばかり飲んでいた」松本穂香、主演作『おいしい家族』で食事シーンに参加できずトホホ顔
昨日より始まった「島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭」2日目の4月19日、沖縄県北谷町のミハマ7プレックスにて特別招待作品『おいしい家族』(9月20日公開)が上映され、長編映画初主演となる松本穂香をはじめ、板尾創路、ふくだももこ監督による舞台挨拶が行われた。
本作は、東京で働くキャリアウーマンの橙花(松本穂香)が、母の三回忌に実家に帰ると、父(板尾創路)が亡き母の服を着て、おいしいごはんをつくって待っていたという、人も気候も穏やかな島を舞台に繰り広げられる、新たな家族のカタチを描いた物語。
若手映画作家育成プロジェクトでの選出に加え、小説「えん」で第40回すばる文学賞を受賞するなど、映像と文学の両フィールドでの活躍が期待される新鋭、ふくだももこ監督が、性別も国籍も人種も越えて、好きなものを好きといえる世界を、おいしく、楽しく、カラフルに描きだした本作。劇中では、伊丹十三監督作品を長年手掛けてきた本多俊之の軽快な音楽が作品に彩りを添えている。
自身が演じた橙花について松本は「台本をいただいて一気に読みました。橙花は間抜けに見えて愛おしく思える。けっこう素直になれない人なのかなと最初は思っていたけど、言いたいことは言う素直さのある役でした」とコメント。続いて、板尾について聞かれると「私も大阪出身で、小さいときから見ていたので緊張しました。“しょうもないこと”をたくさん言ってくれて、現場をほぐしてくれました」と笑顔を見せた。
本作のタイトルにも使われている”おいしい”という言葉について松本は「私の役は拗ねてるシーンが多く、ほとんどお酒ばかり飲んでいたので、意外と食べるシーンが少なかった。ほかのキャストがおいしそうにご飯を食べるシーンを見て、とても羨ましかったです。もし食べるとしたら、劇中のすき焼きが食べたかった…」と悔しそうに話した。
橙花の父、青治を演じた板尾は「毎年沖縄に来ているけど、紅芋がとても好きでよく食べる。スーパーでも売っているので買って帰ろうとしたら、空港で持ち出せなかった。なぜ本土に持ち帰られないのか。蒸して食べたいだけなのに…」と観客の笑いを誘い、その理由を教えてほしいと懇願していた。
最後にふくだ監督は「この脚本を書いているとき、NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』を観ていた。悪い人は誰も出てこないし、笑って泣ける。劇中で、大きな衝突や嫌なことが必ず起きないといけないということはないんだ。こんなふうに脚本を書いてもいいんだと思った」と話し、「この映画を観てくださった人が、ひとりでも周りの人に優しくできるようになれば、世界は良くなっていくと思う。素晴らしい映画になった」と自信をのぞかせた。
取材・文/安村 直樹