【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第8回 想像できない
「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第8回のテーマは「想像できない」です。「サプライズの極意はズバリ、期待を裏切ること」と言う松本監督。“まさか”を積み上げていくワクワク感に胸躍らされるそうで、自身が行ってきたサプライズの数々を語ってくれました。
緊張の告白からのダンス、祝福、で作戦は大成功!
先日親戚がInstagramデビューした。アカウント名を教えると、これまでの私の総投稿数96全てにハートマークを押してきた。どうやら楽しくて仕方がないようだ。
さかのぼってみると、私の初投稿は友達と撮ったプリクラだった。高3の時だ。当時周りでは、女の子同士でプリクラを撮り、そこに各々の彼氏の名前を落書きするというのが流行っていた。
私も流行の波に乗っていたが、Instagramにそのまま載せるのは何だか恥ずかしくてアプリでその部分だけ自分らの名前に書き換えていた。私は当時の彼氏とはそれからしばらくして別れてしまったが、一緒にプリクラを撮ったその友達は今もそこに書かれている彼氏と付き合っている。もうすぐ6年近くになるだろうか。その事実に心なしか誇らしい気分になるのは、2人が付き合ったキッカケに若干関与しているからだ。
思えば昔からサプライズをするのが好きだった。小2でサンタクロースがいないことに気付いてからは逆に自分がサンタの気分で両親の枕元に靴下を用意し深夜にゴソゴソとお菓子を詰めに行ったり、某チェーン店のコーヒー・ショップでアルバイトをしていた時、店長が別店舗の社員さんと結婚することが決まったけれど、今すぐは結婚式は挙げられない、でも本当は店長は挙げたがっているらしいという話を聞き、旦那さんにアポを取り閉店後の店内の締め作業をしているなか突然停電のように消灯させ、BGMを流し旦那さん登場〜両店舗の従業員がクラッカーを持って登場し祝福するミニ結婚式を企画したりなど、色々やってきた。感謝されるされないはそんなに重要ではなくて、どうやったら人は驚くかを考えてそれに向けての準備をしている時のワクワク感がすごく好きなのだ。
高1の時、仲の良かった同じダンス部且つクラスメイトの友達が誕生日だということで、クラス全員からメッセージの入った色紙やダンス部数人からのバースデー・ソングに合わせたダンスのプレゼント(フラッシュモブのようなイメージ)を用意していた。そしてひとつ、かなり気合を入れて準備をしたことがあった。それは、友達が恋している隣のクラスの男子からの「告白」だった。
入学当初私たちは映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』に憧れ野球部にマネージャーとして仮入部していた(結局その後2人ともプレーを見ていると自分たちもやりたくなってしまう性分だと気が付き、辞めてダンス部に入部したのだが…)。その時に友達がかなり良い雰囲気になっている隣のクラスの男子がいた。ぶっきらぼうで口下手な野球少年、というイメージだったがその後何故か私はお互いから相手のことを好きだけどどうしたら良いか、と相談を受けることになったのだ。せっかくなら思い出に残る記念日をと思ったので、昼休みに野球少年に友達を屋上に呼び出してもらい、緊張の告白を繰り広げてもらった。顔を真っ赤にして「ありがとうございます…うれしいです。私も、好きです、ずっと」と友達が返事をしたタイミングで隠れていた私たちダンス部が登場、祝福の踊りを踊り、教室の窓からクラスメイトが「うらやましいぜ!」と書かれた垂れ幕を垂らすということをやった。作戦は大成功に終わった。私も友達も野球少年(今はすっかり坊主から髪も伸びて、茶髪のイケイケ男子になっているが)もきっとこのハッピーすぎる日の記憶を一生大切にしていくだろう。
綺麗事ばかりじゃない世の中だからこそ、大人になってもずっとこういう日を渇望し続けていたいと思うのだ。
今月のSF(すこしふしぎ)な一枚:どこでもドアin登戸
小田急線登戸駅がドラえもん一色になっているとの情報を入手し、行ってみました。どこでもドアを開けたり閉めたり。可愛いですね。
●松本花奈プロフィール
1998年生まれ。中学生の頃より映像制作を始める。慶應義塾大学在学中。主な映画監督作は『脱脱脱脱17』(16)、『過ぎて行け、延滞10代』(17)、オムニバス映画『21世紀の女の子』(公開中)など。撮影を担当したNMB48太田夢莉1st写真集「ノスタルチメンタル」が発売中。新作映画『キスカム!come on, kiss me again』が第11回沖縄国際映画祭で上映された。
文/松本花奈