【追悼】『鉄道員』『追憶』の降旗康男監督が死去。高倉健さんと20作品でタッグ

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【追悼】『鉄道員』『追憶』の降旗康男監督が死去。高倉健さんと20作品でタッグ

鉄道員(ぽっぽや)』(99)で日本アカデミー賞最優秀監督賞と最優秀脚本賞を受賞し、2002年には紫綬褒章、2008年には旭日小綬章を受章した降旗康男監督が、5月20日に肺炎のため死去していたことが明らかになった。84歳だった。

57年に東京大学文学部仏文学科を卒業後に東映に入社した降旗監督は、今年2月に亡くなった佐藤純彌監督の『陸軍残虐物語』(63)や、のちに日本映画史に残る名タッグを組むこととなる高倉健さん主演の『昭和残俠伝』(65)に助監督として携わったのち、『非行少女ヨーコ』(66)で監督デビュー。佐藤監督や深作欣二監督、鈴木則文監督、また先日84歳にして20年ぶりの長編監督作『多十郎殉愛記』(公開中)を発表した中島貞夫監督らとともに東映の一時代を築き上げてきた。

降旗監督といえば、やはり高倉さんとのタッグでよく知られている。監督2作目の『地獄の掟に明日はない』(66)で初めて組んで以来、「新網走番外地」シリーズや『駅/STATION』(81)、『居酒屋兆治』(83)、『夜叉』(85)など自身の49の監督作品のうち20作品でタッグを組んできた。高倉さんは『駅 STATION』と『鉄道員(ぽっぽや)』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞するなど、“俳優・高倉健”の魅力を引き出すその手腕は、多くの映画ファンからも絶大な支持を集めた。

『鉄道員(ぽっぽや)』に続いてメガホンをとった『ホタル』(01)は、戦争の傷を抱えて生きる夫婦の姿を優しく映しだした隠れた名作。そして、のちに北京オリンピックの開会式の演出を受け持つ中国映画界の巨匠チャン・イーモウ監督が手掛けた『単騎、千里を走る。』(05)では日本編の監督を務め上げた。そして高倉さんの遺作となった『あなたへ』(12)の後、21度目のタッグを組む予定だった新作の準備中に高倉さんがこの世を去り、降旗監督は「残念の一言です」とのコメントを発表していた。

2017年に発表した『追憶』が、降旗監督の遺作となった。いまや日本映画界に欠かすことのできない俳優の1人となった岡田准一が主演を務め、共演には小栗旬や柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラといった豪華俳優陣が結集。ある殺人事件をきっかけに、幼なじみの3人の男たちが事件を捜査する刑事と容疑者、そして被害者として向き合うことになる物語だ。淡々と紡ぎあげられていくシンプルなストーリーの中で、俳優たちの演技がより力強くスクリーンに映し出されていた。激しい抑揚を付けずとも、人間の生身の姿を活写することに長けた降旗監督の演出は、晩年に向かうにつれてより洗練されたものとなっていた印象を受ける。

また、降旗の訃報と同じタイミングで『鉄道員』と『ホタル』などを手掛けた映画プロデューサーで元東映常務の坂上順さんも、18日に多臓器不全のため79歳で亡くなっていたことがわかった。昭和と平成、2つの時代を駆け抜けて日本映画界を牽引した2人の映画人の御冥福を心よりお祈りいたします。

文/久保田 和馬

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