マーベル、DCに続く“モンスターバース”って?『名探偵ピカチュウ』に続き絶好調のレジェンダリーが仕掛ける!

コラム

マーベル、DCに続く“モンスターバース”って?『名探偵ピカチュウ』に続き絶好調のレジェンダリーが仕掛ける!

レジェンダリー・ピクチャーズ×東宝の『ゴジラ』が大ヒット!
レジェンダリー・ピクチャーズ×東宝の『ゴジラ』が大ヒット![c]2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』(14)、ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督の『キングコング: 髑髏島の巨神』(17)に続き、ワーナー・ブラザース配給、レジェンダリー・ピクチャーズと東宝が提携製作した『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が、公開されるやいなや日本、北米、中国など各国で週末興行ランキング1位を獲得。公開から15日を過ぎた現在は国内興行収入が17億円超え、全世界興行収入はついに3億ドル(約325億円)となる大ヒットを記録中だ。

ハリウッドでは現在、アイコニックなキャラクター達がクロスオーバーする“シェアード・ユニバース”(共有された次元、世界という意味)を描くフランチャイズ映画が、各スタジオの切り札となっている。ディズニーの「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)を筆頭に、ワーナー・ブラザースは、「ジャスティス・リーグ」のDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)に加えて、すでに公開された上記3作を含める、日本発祥の怪獣達と米国発のキングコングの世界が交わる世界を「モンスターバース」として展開して行く予定。

そしてどうやら米ワーナー&レジェンダリー・ピクチャーズは、「モンスターバース」の“シェアード・ユニバース”を、ディズニーとは違ったアプローチで成功させようと試みているようだ。レジェンダリー・ピクチャーズは2005年の『バットマン ビギンズ』に始まり、「ダークナイト」シリーズなどのブロックバスターをリリース。2016年に、中国の大連万達グループに35億ドルで買収されてからも、『ブラック・クランズマン』(18)や『名探偵ピカチュウ』(19)などのヒット作をワーナー・ブラザースと共同で、製作してきた。

愛すべき日本のキャラクター”ピカチュウ”も大ヒット!
愛すべき日本のキャラクター”ピカチュウ”も大ヒット![c]2019 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. [c]2019 Pokémon.

「モンスターバース」がMCUと異なる点は、長期の公開スケジュールが存在しないところだ。現時点で公開が確実なのは2020年3月公開予定の『ゴジラVSコング(仮題)』のみ。また既に公開された3作においても、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギのように、「ユニバース」を統括して指揮する人物がいない。米オンラインメディアOBSERVERのレポーター、ブランドン・カッツは、モンスターバースのこのようなMCUとは違うアプローチこそが、これから映画界で徐々に台頭していくのではないか、と予想している。

モンスターバースの作品では、未確認生物特務機関のモナークが一貫して描かれているが、それ以外はどの作品もスタイルが顕著に異なる。ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』は、ゴジラをチラ見せし、人間ドラマの展開に重視を置いていたのに対し、ドハティ監督の本作は昭和39年(1964)に公開された『三大怪獣 地球最大の決戦』にオマージュを捧げていることもあり、ゴジラ、ラドン、モスラに加えてキングギドラも登場し、終始複数キャラクターの豪快なバトルシーンが繰り広げられる。『キングコング: 髑髏島の巨神』は、MCUにも出演する有名な俳優たちが登場し、笑いの要素が盛りだくさんのエンタテインメントだ。それぞれの作品で異なる監督が、独立したスタイルで映画を仕上げたことで、スタジオは観客の求める要素やトレンドを見極めることができる。フィルムメイカーとしても、大きなフランチャイズの傘下で比較的自由な描写スタイルが実現できるのは、魅力でもあるだろう。

世界のアイコン的キャラクターを、フランチャイズ化する際、必ずしも『アイアンマン』(08)のように1作目からファンの絶賛を受けられるとは限らない。例に、ユニバーサル・ピクチャーズが往年のモンスター映画を連続リブートする予定だった「ダーク・ユニバース」も、フランチャイズ封切り第1作目、トム・クルーズ主演の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(17)の興行が思いのほか伸び悩んだため、フランチャイズの企画全体が中止になってしまった。またブライアン・シンガーとサイモン・キンバーグが2000年から手掛ける「X-MEN」シリーズも、シリーズが長期化するにつれ、当初の勢いを維持する難しさに直面した。レジェンダリーはそのような他社のアプローチを観察しつつ、経済同様に製作者や作品スタイルにバラエティーを持たせる「ディバーシフィケーション」(分散投資)で、「モンスターバース」の長期継続を図っているのかもしれない。米映画評論サイトの「ロッテントマト」でも、『GODZILLA ゴジラ』(14)の観客スコアは66%、『キングコング: 髑髏島の巨神』(17)は69%、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』84%(6月12日時点)と、徐々に観客の支持を獲得していることがわかる。

【写真を見る】ド迫力『ゴジラ』に愛らしい『ピカチュウ』…場面写真をイッキ見!<画像30点>
【写真を見る】ド迫力『ゴジラ』に愛らしい『ピカチュウ』…場面写真をイッキ見!<画像30点>[c]2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

2020年3月公開の 『ゴジラVSコング』では、ついに怪獣と、ジャイアントモンスターの日米決戦が実現し、ゴジラとコングという2つのユニバースが「モンスターバース」として融合することになる。また本作には日本の俳優、小栗旬が出演することも既に決定している。『ゴジラVSコング』を含め、「モンスターバース」がMCUやDCEUのような息の長いフランチャイズになるかどうかは明らかでは無いが、今後 日本出身の俳優たちがハリウッドで活躍できるプラットフォームとなる可能性としても、このフランチャイズには長期継続を期待したい。

LA在住/小池かおる

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