【今週の☆☆☆】エルトン・ジョンの名曲に心躍る『ロケットマン』や大胆なラブシーンが話題の『火口のふたり』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、8月23日から今週末の公開作品をピックアップ。エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカルに、荒井晴彦の4年ぶりの監督作、イタリアが舞台のサスペンスなど、バラエティあふれる作品ばかり!
あの名曲にド派手な衣装…エルトン・ジョンの半生をファンタジックに描く『ロケットマン』(8月23日公開)
『ボヘミアン・ラプソディ』(18)では、撮影途中に現場から離脱したブライアン・シンガーに代わって助っ人監督として参加した、デクスター・フレッチャー監督によるエルトン・ジョンの伝記映画。ただし同じロック・ミュージシャンの映画でも『ボヘミアン~』とはアプローチが違う。こちらはエルトンの前半生を、エルトンの煌びやかなヒット曲に乗せて語る完全な「ミュージカル映画」になっているのだ!エルトンといえばピエロもびっくりなド派手で道化っぽいステージ衣装で知られているが、そのパブリックイメージのバカっぽさの裏側に秘められた葛藤や内なる悪魔の存在が、常に歌を通じて表現されているのがすばらしい。音楽が推進力となって、エルトンの虚像と実像とをつないでくれる破天荒なファンタジーである。(映画ライター・村山章)
柄本佑&瀧内公美の大胆なラブシーンにくぎづけ!『火口のふたり』(8月23日公開)
こんなに潔くて大胆で、挑発的で力強い大人のラブストーリーは観たことがない。何しろ登場人物は結婚式を10日後に控えたヒロインの直子と、久しぶりに彼女と再会した元カレの賢治のほぼふたりだけ。しかも、瀧内公美(『彼女の人生は間違いじゃない』)と柄本佑が演じた彼らはSEXをし、メシを食い、爆睡を繰り返すのみ。それこそ全裸でいるシーンも多いのだけど、それだけに「1度だけ」という約束で身体を重ねたふたりが、まるで磁石にでも引き寄せられるかのように互いを求め合わずにはいられなくなる展開には説得力があって、人間には、ほかのものは何もいらないんだなって素直に思えてしまう。直木賞作家・白石一文の同名小説を『共喰い』(13)などの脚本家で、これが3本目の監督作になる荒井晴彦が映画化した本作は、それぐらい圧倒的。「世界が終わるとき、誰と何をしていたいか?」。映画が投げかけてくるその問いかけに一つの答えを出す、直子=瀧内公美の本当に幸せそうな笑顔がいつまでも脳裏に焼きつくに違いない。 (映画ライター・イソガイマサト)
温厚な主人公が悪友に影響され、あらぬ方向へ…『ドッグマン』(8月23日公開)
イタリアの寂れた海辺の町。小さなドッグサロンを営む、ごく善人のマルチェロは、暴力的な友人シモーネにパシリにされたり、盗みに協力させられたり、せびられたり…。町のつまはじき者シモーネの理不尽な要求を、なぜ断れない?と観る者はジリジリ焦るが、怖くてつい、とか、友達(と信じたい)だし…と、グズグズになるマルチェロの言動が、わからなくもないのがミソ。そして、ついにキレたマルチェロの恐るべき計画とは…。実際の事件にインスパイアされた物語だけに、人間のままならなさ、人間関係の修正の難しさが余計に刺さる。『ゴモラ』(08)のマッテオ・ガローネが哀しき可笑しさを漂わせて描き、カンヌ国際映画祭主演男優賞、及びパルム・ドッグ賞を受賞。町の漠としたうらぶれ感が、詩情に転がるのも鬼才の証!(映画ライター・折田千鶴子)
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週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス