格闘シーンで“遅くてゴメン”…キアヌ・リーブスが明かす『ジョン・ウィック』最新作の舞台裏
シリーズ最高の全米興収を記録して、盛り上がるドラマと同様に、ますます勢いづく『ジョン・ウィック』シリーズ。第3弾となる注目の『ジョン・ウィック:パラベラム』(10月4日公開)では、主人公の孤高の殺し屋ジョン・ウィックが、大組織を敵に回して奮闘。演じるキアヌ・リーブスも、よりキレのあるアクションを披露してスゴみを見せつける。そんな彼に、この最新作の魅力について訊いた。
「雪合戦のようにナイフをビュンビュン投げ合ったよ」
「シリーズの人気の秘密は、自分でもわからない。ただ、僕が好きなところなら話せる。ジョン・ウィックというキャラクターが、まず大好きだ。彼の脆さや悲しみ、生存への強い意志に惹かれる。作品の世界観や登場人物も素晴らしいし、アクションやビジュアルも最高だ。総合的な魅力を持った作品、ということだね」
キアヌの分析は、本作のファンならば大いに納得がいくだろう。とりわけジョン・ウィックの悲壮なキャラクターは大きな魅力。主席連合という巨大犯罪組織を敵に回してしまった今回のジョンにも、苦境に追い込まれたり、決断を迫られたりのドラマがある。
「エモーショナルなシーンはいくつかあるけれど、まずアンジェリカ・ヒューストンが演じるディレクターとのやりとりは重要だ。ジョンの過去に彼女はつながりがあるからね。それとて砂漠をさまようジョンが主席連合の権力者と会う場面だ。ジョンはここで、自分が生き延びるためには大きな犠牲を払わないといけないと知る。こういうエモーショナルな場面の撮影では役に集中する。それは楽しい作業だ。キャラクターを深く、深く掘り下げることができるからね」
そして、やはりアクションにふれないわけにはいかない。銃撃とカンフーを融合した立ち回りが好評を呼んだシリーズだが、今回もそれをさらに発展させた見せ場が盛りだくさんだ。
「アンティーク・ショップで、ナイフを投げ合うファイトの撮影は面白かったな。あれはオリジナリティがあったと思う。まるで雪合戦のようにナイフをビュンビュン投げ合ったよ。バイクで疾走しながら刀を振りまわす場面も気に入っている。あれは本当にクレイジーだ」
「ジョンには、静かな暮らしは不可能かもしれないね(笑)」
クライマックスでは武術アクター、マーク・ダカスコスや、『ザ・レイド』のシラット使い、ヤヤン・ルヒアン&セセブ・アリフ・ラーマンらを相手に壮絶な肉弾ファイトを演じているが、ここでもカンフー・マスターのようなキアヌの熱演が光っている。
「マーク・ダカスコスは素晴らしい。彼との共演は真のコラボレーションで、僕らの間には信頼関係ができていた。おたがい思い切ったこともできるので、演じていて楽しかったよ。あの場面でジョンは、マーク演じるゼロの戦いぶりを見て、それを吸収・学習しながら応戦する。そういうところが面白いね。ヤヤンとセセブは、格闘術のレベルが本当に高い。とにかく動きが速くて、僕は”遅くてゴメン”と謝るような気持ちだった(笑)。それでも彼らは辛抱強く相手をしてくれて、僕が一拍置いたときに間髪入れず技を繰り出すような、そんなスピーディな振り付けをしてくれた。彼らとの場面は、ほぼワンカット撮影なんだよ」
『ジョン・ウィック』シリーズは、すでに4作目の製作が決定しており、この後もジョンの死闘は続くという。ファンとしては彼の行く末が大いに気になるところで、2年後に全米公開されるという次が早くも待ちきれない。どんな物語になるのかはまだわかっていないが、キアヌ自身は、ジョン・ウィックに、どんな物語を望むのだろう。
「ジョンには自由を得てほしいよ。それと、哀しみを抱えながらの静かな暮らしを。でも、ジョンには不可能かもしれないね(笑)」
とにもかくにも、ジョンが壮絶な運命をたどる今回の新作を見ないことには始まらない。アクションファンならずとも、このエキサイティングな映画に注目してほしい。
取材・文/相馬学