『二ノ国』日野晃博が『HELLO WORLD』伊藤智彦監督と語った、アニメ制作にかける想い
共に公開中のアニメ映画『二ノ国』と『HELLO WORLD』。前者の製作総指揮/原案・脚本は人気ゲーム「レイトン」シリーズや「妖怪ウォッチ」シリーズで知られるレベルファイブの日野晃博、後者の監督を務めたのは「ソードアート・オンライン」などで監督を務め、演出面にも定評のある伊藤智彦だ。それぞれゲームクリエイターとアニメクリエイターという立場だが、作品づくりに共通する考え方はあるのだろうか。今回実現した2ショット対談では、両者のクリエイティブに対する姿勢や、アニメ制作への想いを掘り下げた。
「伊藤さんの作品を、思った以上にたくさん見ていたんです」(日野)
──お互いの作品にはどんな印象をお持ちでしたか?
日野「僕は普段アニメを見るときにはあまり『この人がつくっているんだ』というのを気にしていないのですが、伊藤さんが手掛けてきた作品のリストを見て、『けっこう拝見しているな』と気づきました」
伊藤「僕にとって日野さんは『スーパースター』。ゲームとアニメ、メディアをまたいでのオーガナイザーって希少な存在だなと思っていて。それでいて、ご自身の『影響力』をどの作品にも忍ばせている。そのさじ加減が素晴らしいと思っていました」
──印象的だった作品などはありますか?
日野「『僕だけがいない街』は衝撃を受けました。原作もすごくよかったけど、アニメの演出ですごくドキドキさせられて、こんな上質なサスペンスがつくれるんだ…って。10代後半とか、若い人のフィーリングに合う作り方が上手だなと感じます」
伊藤「制作時には、やはりターゲット層のことを考えますが、ハイティーンの志向はすごく多様なのでどこまで通用するかわからない部分も大きいですよ。日野さんも子どもたちのリサーチをかなりされると聞きましたが…」
日野「子どもたちがいま、どんなものを『クールだ』『面白い』と思っているかはキャッチするようにしています。届ける相手の顔を想像しながら、『これをやったらウケるかな』『驚くかな』ってニヤニヤしながら書いていて(笑)。でもある程度は研究やリサーチでカバーできても、結局その作品の『らしさ』みたいなものは、クリエイター本人の好きなものや演出面のクセみたいなものに表れると思うんです」
「高校生キャラクターの魅力は、『何をするかわからない』ところ」(日野)
――『二ノ国』と『HELLO WORLD』は共に高校生が主人公ですね。主人公の年齢の設定にはこだわりがあったのですか?
日野「『二ノ国』では『恋愛ができる年齢、でもどこか未熟』であることが、ドラマを動かす条件だなと考えていたので、メインキャラクターを高校生にしました。不慣れな恋愛を描きやすいシチュエーションが作れるかなと考えて」
伊藤「僕も似ています。それも進路問題が浮上する2年生や3年生ではなくて入学したての1年生に設定しようと思っていて、中学1年生だと幼すぎるので高校1年生にしました。単なる恋愛ものではなくプラスアルファの要素を入れたいときは、進路などに悩んでいないプレーンな1年生のほうが動かしやすいんです」
日野「ハイティーンの魅力って、なにをするかわからない危うさみたいなところにもありますよね。大人ならやらないけど、好きな女の子のために先生を殴ることもあるかもしれない。それがドラマとして不自然でないというか」
伊藤「そうですね。ちなみに、自分の経験とリンクするような脚本を書かれることはありますか?」
日野「あります!(笑)女の子に言われてドキっとした言葉とか、10代のころに体験した小さなドキドキは作品に入っているかもしれません」
伊藤「僕もです。僕は昔からそんなに活発なほうではなかったので、キャラクターもけっこう最初はネガティブなタイプが多いんですよ」
日野「でも、そういう主人公のほうが感情移入しやすかったりもしますよね」
伊藤「明るいヒーロー的なキャラクターも作ってみたいですけど、僕にそのキャラクターの“タネ”がないんですよね(笑)」