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恐ろしいほどに美しい“幻のファンタジー映画”、30年ぶりにデジタルリマスター版で公開!

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恐ろしいほどに美しい“幻のファンタジー映画”、30年ぶりにデジタルリマスター版で公開!

『クロウ/飛翔伝説』(94)、『アイ、ロボット』(04)などエジプト出身のアレックス・プロヤス監督のデビュー作にして最高傑作と称される映画『スピリッツ・オブ・ジ・エア』が、デジタルリマスター版で2月8日(土)より公開されることが決定。あわせてポスタービジュアルが解禁された。

1990年の第1回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞した本作。公開時、本国オーストラリアでは高い評価を得ながら国外ではほとんど公開されなかったものの、1990年開催の第1回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映され審査員特別賞を受賞。この時の審査員を務めたのは、ジョン・ヴォイト、アンジェリーナ・ジョリー、ジョゼ・ジョバンニ監督、相米慎二監督、根津甚八、竹中直人であった。そして翌年の1991年には正式に劇場公開され、その後VHSは発売されたもののDVDやブルーレイ化はされず、長年にわたって観ることが難しい、失われた作品として存在感を高めてきた。今回の公開は約30年ぶりとなり、16mm撮影ながら2Kスキャンによるデジタルリマスターで鮮烈な映像をともなって甦る。

赤い砂漠と紺碧の空の間に林立する巨大な十字架とぽつんと佇む一軒家。そこに住む足の不自由な兄フェリックスはこの場所ではないどこかへ飛び立とうと、飛行機づくりに明け暮れている。一方、偏執的な気質を持つ妹ベティは死んだ父の墓を守ることに執着していた。茫洋であるのに隔離された2人だけの世界に、スミスと名乗る奇妙な逃亡者が現れるが…。「空を飛ぶこと」への憧れを持つ男を軸に、“絶望”と“希望”、“夢”と“現実”の寓話を幻想的に描きだした驚くほど詩的な一篇となっている。

このたび解禁されたポスタービジュアルでは、恐ろしいほどに美しいオープニングシーンの一部が切り取られており、砂漠の真ん中でベティが真っ赤なドレスを纏って弦楽器を奏でるカットは、圧倒的な空虚さえ感じられる。“夢の着地点”とは、いったい何なのだろうか?

制作に4年半の月日を費やし、壮大なロマンの物語を完成させたプロヤス。公開当時、「『スピリッツ・オブ・ジ・エア』は、目の前に立ちはだかる、時には馬鹿げているとさえ思えるような障害物と戦いながらも、夢を実現させようとする者たちの物語である。この映画に登場する人々は、エキセントリックで弱点も見せる。彼らのシチュエーションはしばしば滑稽であるが、それは実際に我々が経験している日常ほどではない。これは、ある意味での犠牲と失敗についての映画だ。それはただ、笑うしかすべのないものである」とコメントを残しており、30年の時を越えた本作の一筋縄ではいかない魅力を、この機会にぜひ深く味わってほしい。

文/富塚 沙羅

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