もしスーパーヒーローのような超人的なパワーを持つ子どもが、邪悪な存在となってしまったら…。アメコミヒーロー映画の全盛期に、一石を投じるかのようなこの衝撃的な内容を全力で描いているのが、11月15日(金)より公開となる『ブライトバーン/恐怖の拡散者』だ。
ヒーロー×ホラー×スラッシャー、多ジャンルをミックスした意欲作
大友克洋の「AKIRA」をはじめ、近年話題を集めた『クロニクル』(12)や海外ドラマ「ザ・ボーイズ」などのように、ダークサイドに堕ちた超能力者が巻き起こす騒動を描く本作。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズなど、ユニークな作品群で知られるジェームズ・ガンが製作総指揮を務めており、これがひと筋縄ではいかない作品なのだ。
カンザス州の田舎町ブライトバーンに暮らす、愛し合いながらも子どもに恵まれない夫婦トーリ(エリザベス・バンクス)とカイル(デヴィッド・デンマン)。ある晩、自宅近くの森に墜ちた飛来物から謎めいた赤ちゃんを見つけると、彼らはブランドンと名づけ、大切に育てて家族となっていく。しかし、ブランドン(ジャクソン・A・ダン)が12歳になった頃から、彼の内に秘めた力が目覚めだし、心の中の闇が噴出。戸惑いを覚えつつも“思春期あるある”だと見守る夫婦だったが、ブライトバーンの街にも陰惨な事件が次々と勃発。両親は息子に恐ろしい疑いを抱き始める…。
まさに「スーパーマン」を思わせるような展開で幕を開けたかと思えば、徐々にホラー、サスペンス的な色が強くなっていく本作。超能力を駆使したダイナミックなアクションが展開すれば、その直後にはスラッシャーな残虐表現が待っていたりと、様々なジャンルを、これでもかというほど巧みに融合したガンらしい異色作となっている。
闇落ちのきっかけは女の子!?こじらせボーイの逆ギレが生むド級の衝撃…!
子ども×スーパーパワーと言えば、政府の実験により能力者となった少女が、異世界のモンスターから世界を救うべく戦うNetflixの「ストレンジャー・シングス 未知の世界」が世界を席巻中だ。一方『ブライトバーン』は、そのようなスケールの大きな話ではなく、ブランドンの周辺の狭い範囲で繰り広げられる物語。そして邪悪な言動の動機も、“好きな女の子”がきっかけというバリバリ思春期で、どこか身近なものなのだ。子どもゆえに力を用いてやらかしまくっている。
例えば、能力を使って好きな女の子が眠っている部屋に難なく侵入し、彼女のPCで甘い音楽をかける…というどう考えても不気味すぎるアプローチを試みるも、案の定、気持ち悪がられて失敗。翌日にはクラスメイトの前で彼女から「変態!」と罵られ、恥をかかされたことにキレて彼女の手を握りつぶしてしまう始末だ。そのうえ、その言葉の理由は、彼女の母親のせいであると都合の良すぎる思考の変換を行うと、その母親を行方不明にしてしまったり…。
さらには、自分の名前の頭文字をモチーフとしたオリジナルマークを作り、ノートに不気味な絵を描き、周りの人間を見下して両親さえ田舎者呼ばわりするなど、中二病街道まっしぐらのブランドン。反抗期の男の子の危うさを、能力と組み合わせ極限までエスカレートさせた形で表現しているのだ。
触るものみな傷つける尖りまくりのブランドンに対し、果たしてどのような手段で立ち向かっていくのか。物語の終わり方もどこか続編を予感させるようなものとなっており、ガン自身もSNSでその可能性を示唆している。新たなユニバースの誕生となるのか?まずは本作で、その異色ぶりを味わってみてほしい!
構成・文/トライワークス