秀作を続々送り出す工房 ドリームワークス・アニメーションの大いなる25年間(その1)
12月20日(金)に公開となる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』。同シリーズをはじめ、多くの傑作を生み出してきたドリームワークス・アニメーション(DWA)の、第1作『アンツ』以来の歩みを、代表作と共に辿る!
モットーは“あえて定石を外す”
ドリームワークスが設立された1994年、映画界はどよめいた。なにしろスティーヴン・スピルバーグ、『美女と野獣』(91)などでディズニー・アニメーションを復活させた立役者ジェフリー・カッツェンバーグ、音楽業界の大物デヴィッド・ゲフィンがタッグを組んで会社を興したのだ。実写、アニメーション、音楽を全てまかなえる、まさに夢のような仕事をこなす会社になるに違いないと大注目を浴びた。
草創期に顕著な業績を挙げたのが、カッツェンバーグが仕切っていたアニメーション部門。04年には同部門がドリームワークス・アニメーションSKGとして分社化されることになる。
そんな同社が最初に手掛けたアニメーションが『アンツ』(98)だ。実は同年にピクサーが同じくアリが主人公の『バグズ・ライフ』を発表している。画を見れば分かるが、正直、『アンツ』のキャラクターは全く可愛くない。内容も働きアリのZが身分違いの恋に踊らされて騒動を起こすというもので、しかも主人公の声を担当するのはウディ・アレンというなんとも渋いキャスティング。一方でシャロン・ストーンやシルヴェスター・スタローンなど、そうそうたるメンバーが声を当てていて、有名スターが吹替をするスタイルは、その後のドリームワークス・アニメーションのお約束になっていく。つまり愛らしいキャラクターで推す気はなく、あくまでも面白いストーリーと大人が喜ぶ仕掛けで魅せるのが、ドリームワークス・アニメーションのやり方だと、第1作でハッキリと示してみせたのだ。
実際、カッツェンバーグは「フライシャー・スタジオ(『ベティ・ブープ』や『ポパイ』などを生んだアニメーション・スタジオ)のように、大人と、子供の中にある大人心に向けて映画をつくる」とインタビューで語っている。子供に主眼を置くウォルト・ディズニー・スタジオ(以下ディズニー)とは正反対の方向で作品をつくると決めたのは、ディズニーの手の内を知り尽くしたカッツェンバーグならではの作戦だったのかもしれない。その方向性は、提携した英アードマン・アニメーションズの長編映画、ニワトリ版の『大脱走』(63)というべき『チキンラン』(00)をヒットさせたことで、確実に定着していく。
そしてドリームワークス・アニメーションの進むべき道を決定づけたのが『シュレック』(01)だ。ディズニーが何度もモチーフにしてきた“おとぎ話”の主人公たちが暮らす世界が舞台。パロディ連発、ディズニーにはありえないブラックな笑い満載で、おとぎ話のキャラが画面狭しと暴れ回る本作は、全米興収2億6776万ドルを突破。世の大人に、ドリームワークス・アニメーション作品の面白さを知らしめたのだ。
1994
ドリームワークスSKG設立
1998
長編第1作『アンツ』、手描きによる第2作『プリンス・オブ・エジプト』公開
2000
ドリームワークス・アニメーション設立。『エル・ドラド/黄金の都』『チキンラン』公開
2001
『シュレック』が全世界興収4.8億ドルの大ヒット
2002
『スピリット スタリオン・オブ・シマロン』公開
2003
『シンドバッド 7つの海の伝説』公開
2004
『シュレック2』『シャーク・テイル』2本のCGアニメーションを初めて同年に公開。ドリームワークスから分社化、上場。手描きアニメーション事業を廃止。
(その2へつづく)
文/横森文【DVD&動画配信でーた】