【連載】「尾崎由香のぴゅあっとムービー」1月 今月の映画:『パラサイト 半地下の家族』
映画好きで知られる声優・尾崎由香が、鑑賞した映画や自身のあれこれについて語る「尾崎由香のぴゅあっとムービー」(「月刊シネコンウォーカー」&「月刊イオンエンターテイメントマガジン」連載中)。今月は、『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』を手掛けたポン・ジュノ監督によるブラック・コメディ『パラサイト 半地下の家族』(公開中)を取り上げる。
“半地下住宅”で貧しく暮らす、全員失業中のキム一家。大学受験に失敗し続けている長男ギウは、友人に家庭教師の仕事を紹介され、エリート大学生と身分を偽って、パク社長一家が暮らす“高台の大豪邸”で働き始める。ギウは妹ギジョンも美術家庭教師として紹介し、徐々に社長一家に“パラサイト”していくが…。
第72回カンヌ国際映画祭にて最高賞パルム・ドールを受賞し、アカデミー賞レースも席巻している本作。誰も予測できない展開へと転んでいく衝撃的な物語を、彼女はどのように観たのか?
ウソは苦手で、すぐ顔に出ちゃうんです
今回取り上げる『パラサイト 半地下の家族』は、おもしろくてオススメしたいんですが、絶対にネタバレできないからどう伝えたらいいのか…って悩んじゃいますね(笑)。ポスターがちょっと不気味だから、観る前はホラーチックで怖い作品なのかな?って思っていたんですが、序盤から笑う場面が多くてまずびっくり。詳しくは話せないんですが、家族が“ある場所”にみんなで隠れるシーンがあって、そこはハラハラドキドキしたし、すっごく笑いました。
それでいてクライマックスにはショッキングな展開もあったし、観終わったあとは哀しくてせつない気持ちになる。半地下で暮らす家族のお父さん役の俳優さん(ソン・ガンホ)の芝居がうまくて、“感情が見える”んですよ。だから登場人物のなかでも彼に一番感情移入しちゃって、わたしも同じ立場だったら同じ行動に出るかもしれないなって思わされたし、いっそうつらくなりましたね。
ひと言でどんな映画なのか説明するのは難しいですが、コメディ感やサスペンス感もあるけど、誰もが家族のことを大切に思い、愛していて、最後に「家族」っていうワードが残る。だからわたしにとっては、せつない「家族の映画」でした。
ちなみに、映画の中でポイントになっている“ウソ”なんですが、わたしは人をだますのが苦手で、すぐバレちゃうんです。よく「顔に出てるよ」って言われるから、相当わかりやすいんでしょうね…。もちろんふざけてついたウソばかりで、真剣にウソをつこうって思う場面なんてそうそうないんですけど(笑)。でも、わたしも役者なので、本気になったら案外バレずにみんなをだませるかもしれませんよ…!(笑)
おざきゆか◎1993年生まれ、東京都出身。17年のTVアニメ「けものフレンズ」のサーバル役で注目を集める。今月より舞台「DECADANCE-太陽の子-」に出演。1/24(金)~2/1(土)東京公演・EX THEATER ROPPONGI。2/8(土)~9(日)大阪公演・森ノ宮ピロティホール。公式Twitter/@ozaki_yuka515
取材・文/編集部