「スター・ウォーズ」C-3PO役のアンソニー・ダニエルズ73歳が語る、スーツの進化

インタビュー

「スター・ウォーズ」C-3PO役のアンソニー・ダニエルズ73歳が語る、スーツの進化

SF映画の金字塔で、唯一無二の人気シリーズ「スター・ウォーズ」が、エピソード9となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(公開中)で最終章を迎える。本作をはじめ、これまで人気ドロイドC-3PO役を演じてきたレジェンド、アンソニー・ダニエルズが来日したタイミングに単独インタビュー。御年73歳の彼は、42年続いた同シリーズにて、すべての作品に出演してきた唯一の俳優だ。アンソニーは、開口一番「金色じゃなくてがっかりしてない?」とおちゃめに挨拶し、インタビュアーの心を鷲づかみにした。

祖父、ダース・ベイダーの遺志を受け継ぎ、銀河の圧倒的支配者となったカイロ・レン(アダム・ドライバー)に対し、フォースを覚醒させたレイ(デイジー・リドリー)は、亡き伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)から委ねられた想いを胸に、レイア将軍(キャリー・フィッシャー)や天才パイロットのポー・ダメロン(オスカー・アイザック)、元ストームトルーパーのフィン(ジョン・ボイエガ)ら、わずかなレジスタンスの同志たちと共に戦っていく。

「C-3PO役をやりたくないと言ったことは、大きな間違いだった」

もともと舞台俳優だったアンソニーは、『スター・ウォーズ』(77)で、ジョージ・ルーカスからC-3PO役をオファーされたが、実は一旦断っていた。そのあとでエージェントからの説得を受け、出演が決定したそうだ。

「もしも、タイムマシンで当時に戻れるのなら、『断るなんてバカなことをするな!』と言いたい(苦笑)。でも、あのころの僕は、あまりSFが好きではなかったし、一般的にも興味を持っている人が少ないジャンルだったと思う。世間的に人気があったSFものは『スター・トレック』くらいだったんじゃないかな。でも、『スター・ウォーズ』の撮影が終わるころになると、自分がC-3PO役をやりたくないと言ったことは、大きな間違いだったとわかった」。

実際C-3POは、アンソニーが話すクイーンズイングリッシュや、彼が醸す英国紳士的な人柄が相まって、愛すべきキャラクターとなった。「ロボットっぽい話し方にはしたくなかったので、僕が話すイントネーションを少しアレンジした。でも、C-3POのキャラクターはルーカスが書いた脚本に基づいたものだ」。

アンソニーはC-3POのキャラクターについて「ユーモアの感覚がまったくないんだけど、だからこそ彼の生真面目さが可笑しみを生む。いつも感情が素直に表に出てしまうし、どこかもろい部分がある」と捉えている。

C-3PO はCGで表現されるのではなく、実際にアンソニーがスーツを着用しているが、時代と共にスーツも高性能になっていったそうだ。「毎回少しずつ改良されていったし、自分で改良したこともある。例えば『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』(83)の時は、手の部分がプラスチックでまったく動かなかったので、少し可動できるようにしてみたんだ。動けないというのは、本当に大変でストレスが溜まるからね」。

ちなみに『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のスーツは、かなり画期的だったと言う。「やっと指の関節が動かせるような手になった。本作では、C-3POがちゃんとものをつかんでいるシーンが見られるよ。ただ、視野の狭さは、ずっと変わらない。そこは慣れが必要だった」。

「最後だからC-3POになにかをやらせてほしかった」

演じるうえで常に意識したことは「C-3POが感情の揺れ動くキャラクターであるということ」だ。「好きな人たちに対する忠誠心はもちろん、相棒であるR2-D2との絆を表現しないといけなかった。なによりも、観客が見て、本当にC-3POというドロイドが存在すると思えるよう、信憑性を出すことが大事だと思って演じていた」。

C-3POとR2-D2は、「スター・ウォーズ」シリーズには欠かせない名コンビだ。アンソニーによると、アドリブは少なめだったが、R2-D2との掛け合いでは台詞をアレンジしたこともあったそうだ。R2-D2の“中の人”ケニー・ベイカーが入っていたのは旧三部作でも初期のころだけで、R2-D2はほとんどリモコンで動かされていた。また、R2-D2が発する独特な音は撮影後につけられるので、掛け合いでのテンポ感や間合いは、ほぼアンソニーに委ねられていた。

「台本には、ここでR2-D2が音を出す、と書かれていても、現場では沈黙しているわけ。実を言うと、初めて撮影した時は、壊れているのかと思ったくらいだ(笑)」。

満を持して挑んだ本作の予告編では、レイたちを集めたあとC-3POが「最後にもう一度、友人たちにだけ」と意味深な台詞を放つシーンが気になるところだ。アンソニーは、J・J・エイブラムスが本作を手掛けることが決まった時「最後だからC-3POになにかをやらせてあげてほしい」とお願いしたそうだが、その意味も映画を観れば大いに納得がいくはずだ。

アンソニーにとって、長年演じてきたC-3POとはどういう存在なのか。「C-3P0を演じることは、彼を通してなにかに属すもう1人の自分という面もありつつ、とても近い友だちという2つの感覚を持ったんだ。だから、イベントなどで、ほかの人がC-3P0のコスチュームを着ている姿を見ると、妙な感じがする。しかも、そのC-3P0が話すのは、録音された自分の声なので、少し居心地が悪いんだ」。

「スター・ウォーズ」にとってのC-3POは「全部の作品をつなぐ糸」だと捉えているアンソニー。「『スター・ウォーズ』は世界の人にとっての“ギフト”だが、おそらく僕は、世の中の人とは違う見方をしている」と言う点も非常に興味深い。

「私は『スター・ウォーズ』シリーズすべてに関わるという幸運を得た。だからこそ、C-3PO自体を見て楽しむということができかった。すなわちファンの目線で彼を見られなかったので、いまは周りの俳優やファンの方々から、C-3POという存在がどういうものなのかを教えてもらっているところだ」。

1つ1つの質問に対して、とても真摯に答えてくれたアンソニー。これまでC-3POを演じてくれて、心から「ありがとうございます」と言って取材は終了した。彼が万感の想いを投じた『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』をとくとご覧あれ。

取材・文/山崎 伸子

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