【今週の☆☆☆】松たか子、広瀬すずら共演の『ラストレター』やアカデミー賞6部門ノミネート『ジョジョ・ラビット』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、1月17日(金)から今週末の公開作品をピックアップ。アカデミー賞6部門ノミネートも話題の『ジョジョ・ラビット』や、岩井俊二監督が初めて故郷・仙台で撮影したラブストーリー、クリント・イーストウッドがメガホンをとった実録ドラマなど、バラエティあふれる作品ばかり!
ヒトラーが友達のチャーミングな少年の物語『ジョジョ・ラビット』(1月17日公開)
第二次世界大戦末期のドイツでナチスを信奉する幼い少年の日常を描いた、このドラマ。彼がたどる運命は見方によっては悲痛だが、作りはユーモラスで風刺が効き、はつらつとしている。最初は嫌っていたユダヤ人少女との友情の芽生えは、いかにも子どもらしい交流で微笑ましい。主人公のイマジナリー・フレンドとして登場するヒトラーの軽妙さも効いている。なにより、彼を取り囲む大人たちの描写が絶妙で、ナチスに属している者でさえ、市井の人間臭さを感じさせ、善人と悪人の区分を超えたところに人間ドラマの妙が宿る。主演を務めたローマン・グリフィン・デイヴィスの名子役ぶりはもちろん、スカーレット・ヨハンソンら大人の好助演にも注目!(映画ライター・有馬楽)
初恋の想いが時を経て再び動きだす…『ラストレター』(1月17日公開)
裕里(松たか子)は亡き姉・未咲の死を知らせるために出席した同窓会で初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)から姉と勘違いされ、そこから始まった不思議な文通。しかも、鏡史郎の手紙の一つが裕里の娘・鮎美(広瀬すず)に届いたために、鏡史郎と未咲、裕里をめぐる初恋の記憶が再び動きだして…。岩井俊二監督の最新作『ラストレター』は、そんな瑞々しくもせつない初恋のエモーションを、勘違いと手紙の誤配を軸にあぶり出す、岩井監督ならではの語り口と世界観が魅力的なピュアなラブストーリーだ。
現在と過去を何度も往来しながら、物語の視点が裕里から鏡史郎、さらに別の人物へと移行し、それぞれの想いをすくい取っていく構成も鮮やか。登場人物たちの犯罪ギリギリの行為も、この人ならさもありなんという説得力があるし、松たか子、福山雅治はもちろん、鮎美と未咲の学生時代を一人二役で演じた広瀬すず、同じく、裕里の娘・颯香と裕里の学生時代を演じ分けた森七菜、鏡史郎の学生時代を福山の面影を感じさせるように体現した神木隆之介ら全キャストが岩井ワールドの住人になっているのが素晴らしい。さらに岩井監督の名作『Love Letter』(95)で恋人たちを演じた豊川悦司と中山美穂が意外な形で登場。うれしいサプライズで、岩井監督の新たな傑作に華を添えている。
(映画ライター・イソガイマサト)
爆弾テロの第一発見者が転じて容疑者に!?『リチャード・ジュエル』(1月17日公開)
近年ユニークな題材の実録ドラマを手掛けてきたクリント・イーストウッドの最新作は、これまた1996年の米アトランタ五輪開催中に起こった実話の映画化。とあるコンサート会場を襲った爆弾テロ事件で不審物の第一発見者となり、真っ先に多くの人々を避難させながらも、FBIの容疑者となった警備員の物語だ。社会の役に立ちたいと願い、警察官に憧れていた男性が、捜査機関とメディアに容赦なく追い回されて孤立していく皮肉な展開が恐ろしくも痛ましい。主人公リチャード・ジュエルが無実であることは最初から誰の目にも明らかだが、外見からしてヒーローのイメージとはほど遠いジュエルの人物像がこのうえなく不器用で無力な存在として描かれるため、異様なサスペンスが持続する。“英雄”というテーマにこだわるイーストウッドの独自の視点と職人技が光る一作だ。(映画ライター・高橋諭治)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス