賀来賢人と岩田剛典が『AI崩壊』で大沢たかおから感銘を受けたことは?
AIが普及した2030年の世界観を疑似体験した印象について、賀来は「東京オリンピックを境にして急激に変わると言われていますよね」と言ったあと、ふいに「この前、UFOを見たんですよ」と話を切りだした。
「その次の日に、Yahoo!ニュースでもUFOの話題が出たんです。これまで、Yahoo!トップで“UFO”というワードを目にすることが僕はなかったので、実際に変なことが起きているというか、なにか隠し切れないものがいろいろ出てくるのではないかと考えてしまいました。でも、自分自身は10年後も楽しく生きていたいです(笑)」。
岩田も、本作に出演したことで、AI社会の脅威を感じたそうだ。「やっぱり怖いと思いました。人工知能はシステマチックで、人間がコントロールできない部分が大きくて、暴走する怖さがある。そこに自分の個人情報やライフラインを全部あずけるのはけっこう勇気がいることだなと思いました。いわば『マトリックス』の世界で、AIに支配されたらどうしようと考えてしまいますね」。
「とにかく現場の志気が全体的に高かった」(岩田)
また、入江監督が、完成報告会見で「もの作りについて気概のある人たちが集まってくれた」と、力強くアピールしていたが、賀来たちも監督には絶大な信頼感を持っていた。
賀来は、入江監督の演出について「すごく簡潔かつ端的に指示を言ってくださいます。ビジョンがすごく見えている監督なので、1を聞いたら100を返してくれます。でも、一番印象的だったのは、引きの画になった時、エキストラさんの動きまでめちゃくちゃ厳しく見ていたことです。それは作品にリアリティを出す上ですごく大事なことだと思いますが、あそこまでこだわる監督はあまり見たことがなくて。妥協が一切なかったです」と感心しきりだ。
岩田も「現場の演出は、すごくストイックな追求の仕方だったのは間違いないです」と同意する。「このプロジェクトに対する思いが人一倍強かったです。日本の映画界に一石を投じてやるぐらいの気合が入った作品で、そのことを現場でも僕たちに話してくださいました。僕のキャラクターについても、邦画洋画に関わらず、よくいるようなキャラクターにしたくないということで、いろいろとアドバイスをいただきました」。
そして、2人は座長の大沢からも、多くのものを受け取ったようだ。賀来は「僕の口からお芝居の技術的なことは言えませんが、大沢さんはちゃんとすべてを理解したうえで、現場に立ち、作品がもっと良くなるにはどうすればいいのかと、常に考えている。さらに、自分でゼロから新しいなにかを生みだせる人でもあるので、自然と皆がついていくような人でした。パワーがすごかったです」。
岩田も「入江監督を筆頭に、とにかく現場の志気が全体的に高かった」と現場を振り返る。「なかでも、大沢さんの座長としての求心力は、すごかったです。現場では常に明るくて、エネルギッシュに皆を引っ張って下さった。だから厳しい現場でも、すごく楽しかったです。スタッフも含めてすごくいいものを作ろうという感じでした」。
さらに岩田は、大沢が語った言葉が忘れられないと言う。「すごいと思ったのは、大沢さんが『関わった人全員が、この映画をやって良かったと思うべき作品ができたと思っています』と言っていたこと。目先のことや自分のことだけではなく、全員がこの作品でステップアップできたり、なにか得るものがあればというところまで考えていらっしゃるんだと、すごくびっくりしました」。
2人の表情からは、本作に携われた喜びと共に、達成感や充実感も感じ取れた。まさに全員野球で挑んだ快作『AI崩壊』の世界観を、映画館で体感していただきたい。
取材・文/山崎 伸子