ホアキンの“白人ばかりの受賞”を語るスピーチも話題に。英国アカデミー賞最多受賞は『1917 命をかけた伝令』
現地時間2月2日、英国ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールにて、第73回英国アカデミー賞(BAFTA Awards)が開催された。米国アカデミー賞授賞式の開催日前倒しに伴い、今年は英国アカデミー賞も約1週間早く行われる形となった。授賞式には英国王室のウィリアム王子夫妻も出席し、アカデミー賞直前の大きなイベントに華を添えた。
ノミネーションは、『ジョーカー』(19)が11部門、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)と『アイリッシュマン』(19)が10部門、『1917 命をかけた伝令』(2月14日公開)が9部門と、米国アカデミー賞とも近い内容だったが、結果は『1917 命をかけた伝令』が作品賞、監督賞、英国作品賞を含む7部門最多受賞となった。俳優賞は下馬評を体現するかのように、助演女優賞にローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)、助演男優賞にブラッド・ピット(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)、主演女優賞にレネー・ゼルウィガー(『ジュディ 虹の彼方へ』)、主演男優賞にホアキン・フェニックス(『ジョーカー』)が選ばれている。
また、ポン・ジュノとハン・ジヌォンの『パラサイト 半地下の家族』(公開中)が脚本賞、タイカ・ワイティティが『ジョジョ・ラビット』(19)で脚色賞を受賞するというのも、前日2月1日に行われた全米脚本家協会賞の結果と同じだ。
授賞式のハイライトは、助演男優賞を受賞したブラッド・ピットのスピーチだ。あいにく欠席となったブラッド・ピットの代理でマーゴット・ロビーが読み上げた内容は次のようなものだった。「やあ、英国の皆さん。シングルになった気分はどう?“独身クラブ”へようこそ。(中略)この像をハリーと名付け、アメリカに連れて帰るのを楽しみにしています」。これは、先ごろBrexitが成立しEUから離脱した英国と、英国王室から離脱するハリー王子への皮肉を盛り混んだ内容で、会場の笑いを誘った。会場にはウィリアム王子夫妻も来場していたのだが…ブラッド・ピットは、今年の賞レースで賞を受賞するたびにウィットに富んだスピーチで笑いを取っている。
また、脚色賞のタイカ・ワイティティも「とてもクールだね…植民地出身の自分にとっては」と受賞スピーチを始め、英国領であったニュージーランドの歴史についてほのめかした。
主演男優賞のホワキン・フェニックスは、今年の英国アカデミー賞が「白人だらけの賞」と言われていることに言及し、「感謝と共に、複雑な気分だ。同じようにしのぎを削ってきた有色人種の俳優仲間たちは恩恵を受けられていないから…。これは、『あなたたちはこの業界では歓迎されていない』と言っているのと同じだ。誰も特別扱いを受けたいとは思っていないはずなのに、私たち白人は毎年自分たちが賞を受賞するように仕向けている。この問題に加担する1人として、本当に恥ずかしく思っている。インクルーシブ政策に積極的に取り組んでいたとは言えないから。多文化を促すよりも、システムに根付いた人種差別問題に取り組むことが必要なのだ」とスピーチ。
その後、静まり返った会場からは大きな拍手が起きた。賞レースにおけるインクルーシブについてはここ数年議論が絶えないが、お祭り騒ぎの中でこのようなスピーチを行うことは大きな勇気が伴う。それぞれ異なる方法で意見を表明する受賞者の姿から、新しい動きが生まれることを願う。