批評家が選ぶ、韓国映画ランキング!おすすめの“フレッシュ”な名作10選
まず注目すべきは10作品中8本が2010年代に製作された作品ということ。これは90年代後半から着実に成長を続けてきた韓国映画界が、この10年で飛躍を遂げたなによりの表れと言えるだろう。ちなみに残る2作品『母なる証明』と『グエムル』は、いずれも『パラサイト』と同じポン・ジュノ監督の作品。しかもどちらもカンヌ国際映画祭に出品されており、ここで挙げられた10作品すべてがヨーロッパの主要な国際映画祭でお披露目されているのも見逃せないポイントだ(カンヌ7作品、ヴェネチア、ベルリン、ロカルノ各1作品)。
その中で100%フレッシュを獲得し、トップに輝いたのは韓国映画界を代表する職人監督キム・ジウンがメガホンをとり、ソン・ガンホとコン・ユ、イ・ビョンホンの韓国三大スターと、日本人俳優・鶴見辰吾の共演で大きな話題を集めた『密偵』。日本の統治時代を舞台に義烈団と警察との攻防が繰り広げられていくという韓国映画らしい硬派なポリティカルサスペンスで、一寸たりとも途絶えない緊張感が魅力の一本だ。
ほかにも『お嬢さん』や『新感染』といった韓国映画の力を感じさせる傑作ぞろいのなか、一押しの作品は『パラサイト』の前年にカンヌ国際映画祭で歴代最高評価を獲得し、アカデミー賞外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)の最終選考にも駒を進めたイ・チャンドン監督の『バーニング 劇場版』。村上春樹の短編「納屋を焼く」を原作に、舞台を現代韓国に移し替えた同作は、美しい映像とミステリアスな語り口がクセになる極上の一本。
ちなみにチャンドン監督の前作『ポエトリー アグネスの詩』(10)も100%フレッシュを獲得しているが、現在日本国内の配信サービスで鑑賞できないため今回の10傑からは除外している。こちらも是非チェックしてほしい作品だ。
『パラサイト』が受賞するまで、韓国映画は一度もアカデミー賞にノミネートすらされてこなかった歴史がある。変化と多様性の時代に映画界の中心地ハリウッドで大きな一歩を踏みだすことに成功したポン・ジュノ監督ら野心的な映画人たちによって、韓国映画界は今後さらなる発展を遂げることだろう。『パラサイト』で韓国映画の魅力を知った人はもちろん、韓国映画ファンや韓国映画に少しでも興味がある人は是非、韓国映画の計り知れないパワーをとくと体感してほしい。
文/久保田 和馬