4Kリマスターで進化した、時代の先を行く『AKIRA』の“サウンド”|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
4Kリマスターで進化した、時代の先を行く『AKIRA』の“サウンド”

コラム

4Kリマスターで進化した、時代の先を行く『AKIRA』の“サウンド”

レーザーディスクからVHS、DVDにBlu-rayと映像メディアの進化と共に、新たに生まれ変わってきた『AKIRA』(88)。そして、その最新形となる4Kリマスター版「AKIRA 4Kリマスターセット」が現在発売中だ。より鮮明になり迫力も増した本編映像はもちろん注目したいところだが、今回は、“音楽”について解説された特典映像の内容に迫りたい!

「AKIRA 4Kリマスターセット」は発売中
「AKIRA 4Kリマスターセット」は発売中

オリンピック開催を翌年に控えた2019年のネオ東京を舞台に、超能力を持つ謎の存在“アキラ”を巡る、軍やゲリラ、主人公で“健康優良不良少年”の金田らの戦いが繰り広げられる本作。大友克洋監督のもと、緻密に描かれた街並みのビジュアルや時代を先取りした先鋭的なストーリーによって、長年にわたり熱い支持を集め続けているが、圧倒的な音楽を担当した芸能山城組の存在も忘れてはならない。特典ディスクには、その芸能山城組によって作り上げられたサウンドへのこだわりがしっかりと収められている。

“健康優良不良少年”のリーダー、金田
“健康優良不良少年”のリーダー、金田[c] 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

4Kリマスター版になったことで“音”はどう進化したのか?

特典映像の軸となるのが、<AKIRA SOUND MAKING 2019>と<AKIRA SOUND CLIP BY 芸能山城組>という二つのコンテンツ。AKIRA SOUND MAKING 2019には、特典ブックレットにも解説文を寄稿している、オーディオ・ビジュアル/音楽評論家の麻倉怜士、芸能山城組の組頭・山城祥二、録音エンジニアの名倉靖の3名による鼎談が収録されている。

【写真を見る】鉄雄と同じように、大勢のファンも憧れた“金田のバイク”
【写真を見る】鉄雄と同じように、大勢のファンも憧れた“金田のバイク”[c] 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

4K版サウンドの、これまでとの一番の違いをあげるならば、48 kHz/24bitから、人の可聴域を超える高音周波数、192 kHz/24bitの“ハイパーソニック・エフェクト”へと、音響規格がアップデートされている点だろう。それは映像内での麻倉の言葉を借りるなら、“音の情報量”が劇的に多くなったということ。実際に耳にすると、その想像以上にリアルな音の迫力に驚く。

ハイパーソニック・エフェクトは通常のBlu-ray版にも導入されていたのだが、4K版ではそれがより明瞭になり、人の耳では聞こえないような音も“体感”できるようになった。つまり、サウンドがリニューアルされたことで、すでに作品を観ている人にも新たな体験を提供してくれるのだ。詳細は実際に映像を観ていただきたいのだが、麻倉、山城、名倉によるトークから、音響面でも本作がさらなる高次元へと進んでいることがわかる。

反政府ゲリラとしてテロ活動を行う少女、ケイ
反政府ゲリラとしてテロ活動を行う少女、ケイ[c] 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

アフレコ当時を振り返るキャストインタビューも収録!

映像の後半には、岩田光央(金田役)、佐々木望(鉄雄役)、小山茉美(ケイ役)、草尾毅(甲斐役)らキャスト4名に、音響監督の明田川進を加えた5人による座談会も収録されている。30数年ぶりに集まり、当時のアフレコを振り返る5人。主役の岩田が「(当時は)役に寄せるつもりはなく、無邪気にのびのびと演じていました(笑)」と打ち明けると、佐々木も「なにもわからなかった。ただ鉄雄でいようと思った」と必死だった新人時代を吐露する。

さらに、小山が「金田を中心にすべてが回っていて、金田の出方次第で自分(ケイ)も変わっていった」、草尾も「現場でなにが起こるかわからないので、なにが来ても対応できるように準備していた」と続き、本作ならではの知られざる苦労や貴重な思い出が語られていく。ここでの言葉を聞いたうえで本編を鑑賞すると、セリフの一つひとつから受け取る印象にも変化があるかもしれない。

金田らの悪友、甲斐
金田らの悪友、甲斐[c] 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

唯一無二の本作のサウンドに迫る映像クリップ集

AKIRA SOUND CLIP BY 芸能山城組は、1988年に発売された映像クリップ集を再収録したもの。「金田のテーマ」や「クラウンとの闘い」、「覚醒のテーマ」といった劇伴の収録風景のほか、芸能山城組のライヴ映像や本編の各シーンも用いられている。

芸能山城組の音楽の特徴とも言える、様々な民族楽器を使ったエスニックな音に、シンセサイザーなどのハイテクノロジーが加わり、そこにヒューマン・ボイスつまり“人間の声”が混ざり合っていくことで、唯一無二の本作のサウンドが作り上げられていく。また、それらの楽曲は、一度コンピューター上で制作された後、人の手によって演奏されたものを収録するという手法が取られているそうだ。高い熱量の創意工夫にあふれた制作現場を見ることで、『AKIRA』が時代の先を行く作品だったことをあらためて思い知らされる。

本作のカギとなる“AKIRA”とはいったい?
本作のカギとなる“AKIRA”とはいったい?[c] 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

これらのほか、特典ディスクには1988年公開版のエンドクレジットや絵コンテ集、様々なバージョンの予告編も収められている。本編映像と共に鑑賞すれば、作品への理解がより深まるはずだ。

文/トライワークス


伝説の作品が4Kリマスターで帰還!『AKIRA』特集


■「AKIRA 4Kリマスターセット」4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc
発売中
価格:9,800円+税
【特典】
●特典ディスク(Blu-ray)
 ・AKIRA SOUND MAKING 2019
 ・AKIRA SOUND CLIP BY 芸能山城組
 ・エンドクレジット(1988年公開版)
 ・絵コンテ集(静止画)、劇場特報、予告集
●特製ブックレット(岩田光央×佐々木望×小山茉美×草尾毅×明田川進によるスペシャル座談会などを収録)
https://v-storage.bnarts.jp/sp-site/akira/?inside=true
作品情報へ

関連作品

  • AKIRA

    4.3
    98
    大友克洋原作の同名コミックを大友自らが監督を務めて映画化したSFアニメーション
    Amazon Prime Video U-NEXT Hulu