『楽園』『太陽は動かない』で味わい尽くす、吉田修一作品の“最深部”|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2020/5/19 20:30

『楽園』『太陽は動かない』で味わい尽くす、吉田修一作品の“最深部”

『64-ロクヨン-前篇』(16)で第40回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した瀬々敬久監督が、芥川賞作家である吉田修一の「犯罪小説集」を映画化した『楽園』。
昨年秋に劇場公開されて大きな話題を集めた本作が現在、iTunes Store、ひかりTV、U-NEXT、dTV、Amazon Prime Videoほか各動画配信サービスにてデジタル配信中だ。本稿では、人間のリアルな感情を描写し、これまで幾度となく映像化されてきた吉田修一作品の魅力について触れていきたい。

好評デジタル配信中の『楽園』で、吉田修一作品の真骨頂を堪能!
好評デジタル配信中の『楽園』で、吉田修一作品の真骨頂を堪能![c] 2019「楽園」製作委員会

本作は、ある地方都市のY字路で少女失踪事件が起きることから幕を開ける。孤独な青年・豪士は、失踪した少女の親友だった紡と出会い、それぞれの不遇な境遇に共感しあう。そしてそれから12年。事件は未解決のまま、同じ場所でふたたび惨劇が起こってしまう。
一方、事件現場から程近い集落で愛犬と穏やかに暮らす善次郎は、ある行き違いから村八分になり孤立を深める。やがて正気を失っていく善次郎は、誰も想像がつかなかった事件を引き起こすことに…。

吉田が「執筆中に、感情に呑み込まれそうになった」と語る『楽園』

登場人物たちの複雑に絡み合う感情と人生模様に、吉田自身も呑まれそうになったと明かす
登場人物たちの複雑に絡み合う感情と人生模様に、吉田自身も呑まれそうになったと明かす[c] 2019「楽園」製作委員会

1997年に「最後の息子」で文學界新人賞を受賞し作家デビューした吉田は、その5年後に「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞するなど、これまで多くの文学賞を獲得してきた。また、当代随一の人気作家の一人として2000年代中頃から著作が頻繁に映像化されるようになる。
行定勲監督がメガホンをとった『パレード』(10)は世界三大映画祭の一つベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、李相日監督が映画化した『悪人』(10)と『怒り』(16)は共にヒットを記録し、日本国内の各映画賞を席巻。

登場人物たちの感情が複雑に絡み合うことで生まれるドラマ性と、その先に待ち受けるサスペンスという吉田作品の最大の強みは、役者によって演じられることでより一層の魅力を増すことに。そんな吉田自身、本作の原作「犯罪小説集」を執筆するうえで「犯罪によって人生が狂ってしまった人たちのことを詳しく知りたい」という想いを持っていたとのことで、「こんなにも物語をコントロールできず、彼らの感情に呑み込まれそうになったのは初めて」と明かしている。一体どれほど強い感情が、この物語を動かしているのだろうか。

“人間本来の姿”を描くことに長けた2人の作家の化学反応

吉田作品の最高傑作と名高い「犯罪小説集」を原作にしたヒューマン・サスペンス
吉田作品の最高傑作と名高い「犯罪小説集」を原作にしたヒューマン・サスペンス[c] 2019「楽園」製作委員会

本作は、その短編集に収録された2つのエピソード「青田Y字路」と「万屋善次郎」を基にして物語が構築されている。少女失踪事件の容疑者にされてしまう綾野剛演じる豪士をはじめ、親友を失った傷を抱えつづける杉咲花演じる紡、静かに狂気を携えていく佐藤浩市演じる善次郎。そして彼らを取り巻く人々の人生が、少女失踪事件をきっかけに交錯していく姿が描かれていくのだ。

そこには吉田作品ならではの要素はもちろんのこと、『アントキノイノチ』(11)、『友罪』(18)などを手掛けてきた瀬々監督の強い作家性も色濃く反映されている。「自分の原作が“瀬々色”に染まるのを期待していた。
完成作を観たら想像したものをはるかに超えていて、圧倒されました」と、かねてから瀬々監督のファンだったという吉田は、本作の出来栄えに太鼓判を押している。吉田と瀬々監督、鋭い視点で人間本来の姿を描くことに長けた2人の作家同士の化学反応によって生まれたサスペンスフルな展開には、きっと心えぐられることだろう。

■『楽園』
iTunes Store、ひかりTV、U-NEXT、dTV、Amazon Prime Videoほか
各サービスにて配信中
Blu-ray&DVD 発売中
価格:Blu-ray 5,800円+税、DVD 4,800円+税
発売・販売元:ハピネット

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