役所広司、原田眞人監督、モントリオール世界映画祭での受賞報告!「映画はビジネス」
第35回モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリを受賞した『わが母の記』(2012年公開)で主演を務めた役所広司と、原田眞人監督が9月1日、京都・大江能楽堂で受賞報告会見を行った。
現在、役所と原田監督は本作と連動した企画のテレビドラマ「初秋」を撮影中。トロフィーを手にした原田監督は「燦然と輝くトロフィーを見た時、胸打たれ言葉がしばらく出ませんでした。トロフィーを持ち帰った息子から聞いた話では、トロフィーは飛行機に持ち込むと凶器とみなされるから、タオルにくるんでスーツケースに入れて持ち帰ってきたそうです(笑)。だから、ご苦労様と(トロフィーを)なでてあげました」と笑顔を見せた。
同映画祭に参加していた原田監督の息子で、本作の編集を担当した原田遊人から、ドラマの撮影中に「審査員特別賞ゲット」という受賞報告メールを受け取った原田監督は、「ピンと来なかった。そうしたら、樹木(希林)さんから『喜びなさいよ!大きい賞ですよ。(紹介されたのが)最後から二番目ですよ』と電話がきました。一番気になっていたのが観客の反応だったのですが、素晴らしかったという話を聞いた時点で、涙が出てきました」と振り返った。
役所広司の海外映画祭初参加は、原田監督と一緒だった『KAMIKAZE TAXI』(95)の時だった。今回も原田監督と共に映画祭に参加したかったという役所は、「(受賞発表後に)希林さんはクールな方なんですが、電話で話した時はかなりテンションが高く、希林さんの声から現地の興奮が伝わってくるような感じがしました」と裏話を披露した。
本作が同映画祭で評価を得たポイントを原田監督は、「審査委員長のビセンテ・アランダ(スペインの巨匠監督)が85歳だったというところでしょうか(笑)。(原作の)井上靖作品は海外でも人気が高く、現地の会見でも原作についての質問があったとのことです」と照れ隠しをするような冗談まじりで話し、役所は「世界中どこの国でも母親に対する思いというのは同じだろうと思います。言葉は通じなくても母親を思う気持ちと、母親と心が通じ合う喜びというのは、きっと世界的に共感していただけるところだと思っていました」と作品に込められた思いを明かした。
東日本大震災の前日3月10日に本作はクランクアップを迎えた。役所は「『わが母の記』は心のケアになるような映画だと思います。映画を作っている人間として、この映画を通して震災にあわれた方にも元気を届けられたら」と心境を語り、「最近は大人も楽しめる映画が少なくなっていると思う。映画はビジネスですから、たくさんの人に見てもらって、ヒットして、ビジネスとして成功しなければならない。やはりインスタントもので、すぐおいしいものといったものではなくて、しっかりかみしめてじんわり深いもの、50年後に見ても楽しめる映画を作り続けなくてはと思います」と役者魂を見せた。
ドラマ「初秋」に出演している中越典子が花束を持ってお祝いに駆けつける一幕もあり、改めて一同は受賞を喜んだ。【Movie Walker】