永山絢斗「ポップな仕上がりになっていて驚いた!」
『偶然にも最悪な少年』(03)のグ・スーヨン監督が、自身の著書を映画化した『ハードロマンチッカー』(11月26日公開)。本作は、山口県下関市を舞台に、日々を刹那的に生きる若者たちの姿をバイオレンス描写満載で映し出した異色の青春ドラマだ。今回はそんな本作で、若者たちの抗争の原因となる事件を起こすキーパーソン・辰を演じた永山絢斗に、作品に込めた思いや、自身の役どころに対する考えを語ってもらった。
これまでの出演作では“爽やかな好青年”を演じることが多かった永山。本作では、そんな従来のイメージを覆すほど、過激で強烈なインパクトを放つ若者を演じているが、そんな辰というキャラクターを、自身ではどのようにとらえているのだろうか? 「まず、劇中に出てくる人物がみんな個性的ですよね。小さな町のなかで、それぞれが精一杯見栄を張って、お互いになめられないように、対等な関係を保とうと必死になって生きている。そんななかで僕が演じた辰は、皆の弟分のような存在なんです。皆から可愛がられているから、周りを疑うことを知らなくて、咄嗟の時には善悪の関係なく、言われたとおりの行動を取ってしまう。純粋だからこそ、凶暴性や怖さが際立つキャラクターですね。出番は少ないですけど、強烈な印象を残す人物を演じられて嬉しかったです」。
永山にとって、お気に入りのキャラクターである辰だが、完成した作品を見るまでは、自身の演技が不安で仕方なかったという。「台本を読んだ段階ではハードな作品になると思ったので、声のトーンを押さえて、殺伐とした雰囲気をイメージしながらキャラクターを作っていきました。でも現場で監督と話し合ううちに、どんどん声のトーンが高くなって、セリフの言い回しもコミカルなものになっていって。考えていたよりも随分と軽いノリの人物になったんです。こんなキャラで、僕だけ浮かないかな?って心配だったんですけど、完成した作品を見たら心配するようなことはなくて、安心しました(笑)」。
続いて、完成した作品を見て、どんなことを感じたのか? 率直な感想も聞いてみた。「全編を通して見るまで、この映画は息が詰まるような、ガチガチにハードなバイオレンス作品になると思っていたんです。けれども、ふたを開けてみると、めちゃくちゃポップな雰囲気に仕上がっていたのでびっくりしました。もちろん、暴力的で痛々しいシーンもたくさんあるんですけど、ちゃんと痛みを感じられる。音楽や編集のテンポがすごく格好良くて、映画の世界観にぐいぐい引き込まれてしまう。こういうジャンルの作品って、最近ではあまりなかったので、参加することができて本当に幸せです!」。
本作には、主演の松田翔太をはじめ、柄本時生や遠藤要といった同世代の俳優が多数出演しているが、彼らとの共演は永山にとっても良い勉強になったそうだ。「ここまで凶暴な男たちって、普通のドラマだとなかなか見かけないですよね。松田さんをはじめ、各俳優さんの普段は表に出さない意外な一面を間近で見ることができて、とても良い刺激を受けました。今後、もし機会があれば、こういった過激な作品で再共演したいですね。その時はもっと輪の中に入れる役をもらえると嬉しいな(笑)」。
最後に、そんな本作の見どころについて語ってもらった。「とにかく、男らしさがスクリーンから飛び出してくるような映画なので、世の男性陣には是非見てもらいたいですね。最近は“草食系男子”とか、ちょっと弱い雰囲気の男の人が多いと言われる時代なので、この映画から『ある一つの形の男らしさ』とは何か?ということも感じてもらえると幸いです」。
多方面で活躍中の若手俳優陣が勢ぞろいし、普段あまり見せない凶暴な一面を存分に披露してくれるバイオレンスムービー『ハードロマンチッカー』。見ているうちにどんどんテンションが上がっていき、まるで自分もワイルドな男たちの一員であるかのような気分に浸れる本作の公開をどうぞお見逃しなく!【六壁露伴/Movie Walker】