娘には負けない! 歳を重ねるごとに進化するフランシス・フォード・コッポラ監督の映像美

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娘には負けない! 歳を重ねるごとに進化するフランシス・フォード・コッポラ監督の映像美

『ゴッドファーザー』シリーズ、『地獄の黙示録』(79)などで知られるフランシス・フォード・コッポラ監督。『コッポラの胡蝶の夢』(07)以降、極めて作家性の強い映画作りへとシフトした巨匠が『バッファロー'66』(98)、『ブラウン・バニー』(03)で知られる個性派俳優ヴィンセント・ギャロを主演に迎え、2009年に製作した『テトロ 過去を殺した男』が2月10日(金)のDVDリリースに先駆け、1月7日より劇場公開されている。

退廃的な雰囲気の漂うアルゼンチンのブエノスアイレスを舞台に、名をテトロと変え、全ての過去を捨てて生きる男アンジーと、長年音信不通だった彼の元を訪ねてきた弟ベニーの交流を描く本作は、コッポラ監督の生涯のテーマともいうべき“イタリア系移民家族の葛藤”がモチーフ。監督本人も「私自身を投影した最も美しい映画が完成した」と語っているほど、作品への思い入れはかなりのものだ。また、色彩という情報を排した美しいモノクロームの映像が生む陰影は、ヴィンセント・ギャロや“次代のレオナルド・ディカプリオ”と賞賛される、ベニー役のアルデン・エーレンライクら、俳優たちの表情の変化を繊細にとらえ、見る者にセリフでは表現されない登場人物の心情を浮き彫りする効果も担っている。

近年は『ロスト・イン・トランスレーション』(03)、『マリー・アントワネット』(06)、『SOMEWHERE』(10)などで世界的に高い評価を得ている娘のソフィアに水を開けられている感のあるコッポラ監督だが、長年培ってきたその経験や磨き抜かれた感性はまだまだ進化を続けている。50年近くに及ぶ映画人生を歩んできた監督だからこそ描くことのできる芳醇な物語を是非スクリーンで味わってほしい。【トライワークス】

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