『おおかみこどもの雨と雪』で母になった宮崎あおいが語る「育てるって大変なこと」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『おおかみこどもの雨と雪』で母になった宮崎あおいが語る「育てるって大変なこと」

インタビュー

『おおかみこどもの雨と雪』で母になった宮崎あおいが語る「育てるって大変なこと」

『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)の細田守監督最新作『おおかみこどもの雨と雪』(7月21日公開)がいよいよ公開を迎えるのを受け、おおかみこどもの子育てを体験する主人公・花を演じた宮崎あおいとメガホンを取った細田守監督にインタビュー。宮崎が「幸せな時間」と振り返るアテレコ時のエピソードから制作秘話まで、ふたりに語ってもらった。

「声のお仕事は3度目」と話す宮崎あおい。意外なことに「声の仕事は苦手なジャンル」と明かす彼女だが、今回は初めて心から楽しんだという。「共演者の方と一緒だったので、大沢たかおさんとも『声の仕事っていう感覚はなかったよね』と話をするぐらい、とても自然体でいられて。みんなと一緒に物語を作っていく作業がとても楽しくて充実していたから、終わった時はすごく気持ち良かったんです」。

そんな彼女に「パーフェクトに理解してくれた」と賛辞を惜しまない細田守監督だが、この心地良い現場は監督のこだわりから生まれた。「タイミング的に難しければ役を変わってもらうぐらい、順撮りを貫徹することにはこだわりました。花の13年は、時間の積み重ねによって生まれてくるものだと思うんです。あおいさんが花の日常を体感することによって、次の声が生まれる。その積み重ねが大事だと。実際、表現がどんどん豊かになっていくのを感じることができました。時間を重層的に重ねることができたので貫徹して良かったですね」。

彼女が育てるのは、おおかみこどもだけに、人間の子供以上に暴れ具合もワイルドだ。感情の赴くまま、くるくる変身し、部屋は怪獣が暴れたような散らかり具合、もちろん病気にだってなる。子供たちがいつ変身するかわからないから、誰にも相談することができず、一人で奮闘する。そこで彼女に、子育てした感想を聞いてみると、「演じている間は花の感覚だったので、花と同じように目の前で起きてることに一所懸命になっていたので、子育ては大変だなあという感覚でした。子供じゃなくても、何かを育てるって体験は誰しもが経験していて、昆虫やお花でもうまくいかないことがあるじゃないですか。私もこの間、簡単に育てられるという大葉とトマトを育ててみたんですけど、パリに行っている間に枯れちゃって、帰って来たらしょぼーんとしてたんです。育てるって大変だなあって改めて思って。鉢植えでも大変なのに、畑でじゃがいもを育てるのはもっと大変だろうし、手間をかけて毎日話しかけると作物は元気になるっていうけど、実際にはそういうことって心に余裕がないとなかなかできない。だから、それをしていた花ってすごく器の大きい人だったんだなって、花のすごさを今、改めて感じています」と明かした。

無邪気な姿に愛しさを感じるも、時が経ち、ふたりはそれぞれの生き方を見つけていく。そんなふたりを間近で見守った彼女に心境を聞くと、「花と同じ気持ちですよね。幸せで、本当に誇らしい気持ちでいっぱいだけれども、もうしてあげられることが何もないんだと思うと寂しくて。私にも兄弟がいるんですけど、いろんな選択をして、大人になってそれぞれの道を歩いていく。同じ子供だったはずなのに離れ離れになってしまうんだって思ったら寂しくて、うるっときちゃいました」と教えてくれた。

花が経験する13年の月日を、美しい日本の四季と共に描き出した細田監督にとって、今回の挑戦は「作品に風を吹かせること」。「今までも記号的に風は吹いていたと思いますし、セルを使えば風を表現できる。だけどそうじゃなくて、森の木々が嵐の日に大きくしなったり、花々が風に揺れたりするのを真正面から描こうと。本来なら動かないはずの大野広司さんが描いた背景を、その筆致のまま動かすというチャレンジをしています。CGの技術によって、それが可能になったし、新しい風を吹かせることができたんじゃないかな」。

最後に宮崎が「普段、アニメーションを見て、登場人物たちの感情に寄り添うことはあまりないんですけど、この作品には『このシーンのこの表情。何て良い顔をするんだろう』と思うシーンがたくさんあって。なかでも好きなのが、嵐の中、小学校に取り残された雪と草平くんが教室の窓際で話をしているシーンなんです。草平くんが雪にある言葉を言って、顎をくいっと上げるんですけど、その上げ方が憎いんです。アニメーションでキャラクターの表情に心を動かされるのは初めて感じた感覚でしたし、心を動かされる良いシーンがたくさんありました」と語った。スクリーンで雄大に広がる日本の四季、無邪気で愛らしいおおかみこどもたちの姿、そしてそれぞれが歩む道。誰もが一度は通る人生の原体験がこの作品にはある。是非とも劇場で大切な人と見てほしい一本だ。【取材・文/大西愛】

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